アウストラロピテクスアナメンシス(その他表記)Australopithecus anamensis

改訂新版 世界大百科事典 の解説

アウストラロピテクス・アナメンシス
Australopithecus anamensis

前期鮮新世の猿人の一種。アナムは現地語で湖,アウストラロピテクスは〈南のサル〉という意味。アナム猿人,アナメンシス猿人とも呼ばれる。いわゆる華奢型猿人に含まれる。ケニアのトゥルカナ湖南西のカナポイとトゥルカナ湖岸のアリア・ベイから,1994年にリーキーM.G.Leakey,ウォーカーA.Walkerたちによって発見された数十点の化石人骨で,年代は420万~380万年前。模式標本はカナポイで発見された下顎骨(KNM-KP 29281)。エチオピアのミドル・アワッシュでも化石が発見されている。猿人としては原始的な特徴と進歩的な特徴がモザイク的に混じっていて,アウストラロピテクス・アファレンシス祖先の可能性があると考えられている。顎先(オトガイ)が強く傾斜し,下顎の左右歯列が平行で,犬歯が大きい点はアファレンシスより原始的である。犬歯の性差(オスとメスの違い)はアファレンシスと同じくらいに大きい。臼歯は大きくなり始めていて,年代の古いアルディピテクス・ラミダスと新しいアファレンシスの中間である。脛骨はまっすぐで,骨幹中央部を欠いているが,膝関節と足首関節の部分の形状能率の良い直立二足歩行が可能であったことを示している。上腕骨は,ヒトチンパンジーの特徴を混ぜたような形態で,アファレンシスとは似ていない。手根骨の一部はチンパンジーと似ているといわれる。男性と思われる脛骨から推定された体重は47~55kg。女性の体重は33kgほどといわれている。なお,オロリン・トゥゲネンシスを発見したセニューB.Senutは,アナメンシスをプレアントロプスPraeanthropusと呼び,ホモ属の直接の祖先であると主張しているが,一般の支持を得ていない。
アウストラロピテクス・アファレンシス →猿人 →華奢型猿人
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

知恵蔵 の解説

アウストラロピテクス・アナメンシス

初期から中期の猿人たちのうちで、歯と顎が巨大ではない5種(華奢型猿人)。生息年代は、それぞれおよそ420万〜390万年前、375万〜295万年前、340万〜300万年前、290万〜230万年前、250万年前。アナメンシス(アナム地域)はケニアとエチオピアで、アファレンシス(アファール地域)はエチオピアとタンザニアで、バーレルガザリ(ガゼルの川)はチャドで、アフリカヌス(アフリカの)は南アフリカで、ガルヒ(驚き)はエチオピアで、主として出土している。脳容積は400立方センチほどでチンパンジーと大差ないが、犬歯は退化し、直立二足歩行していた。特にガルヒは、脚が長く、石器を使った形跡があり、後のヒト属につながるともいわれている。

(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)

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