改訂新版 世界大百科事典 「アオイトトンボ」の意味・わかりやすい解説
アオイトトンボ
Lestes sponsa
トンボ目アオイトトンボ科の昆虫。体長約40mm。体の背面は金属緑色なのでこの名がある。下面は黄褐色。成熟した雄では黄褐部が黒化し,また体表面全体に白粉を帯びてくる。ユーラシア大陸の北部の種類で,ヨーロッパからシベリアを通じて日本列島の北方に広くふつうに産する。北海道と本州の北半部では湿原や山間の池沼に多産する。前年の秋に挺水植物の組織内に産みつけられた卵は春に孵化(ふか)し,幼虫は3ヵ月くらいで成長を終わり,7~8月ごろ羽化し秋まで水域に現れて生殖活動を行う。西南日本では本種の分布は局所的で,また羽化してから成熟までに森林中などで過ごす期間が長い。一般にこの属の種類はあまり移動せず,静止する際には翅を半開にしている。アジア,アメリカ,ヨーロッパ,アフリカに約200種が分布している。この科には近似のオオアオイトトンボ(平地の林間にすみ堅い木に産卵),オツネントンボ(褐色で,寒冷地にすむ),ホソミオツネントンボ(体が細く,暖地にすむ)など成虫で越冬する種類がある。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報