日本大百科全書(ニッポニカ) 「アザンデ」の意味・わかりやすい解説
アザンデ
あざんで
Azande
中部アフリカに住む、スーダン語を話す民族。ザンデともよばれる。人口は1970年代の初めで約75万。ナイル川とコンゴ川の分水嶺(ぶんすいれい)の両側、すなわち南スーダン共和国、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、中央アフリカ共和国などにまたがる地域に住む。北部はサバナ地帯、南部は熱帯雨林地帯で、シコクビエを中心にトウモロコシ、マニオク、ピーナッツ栽培の農耕のほか、狩猟、漁労、採集にも適した地域である。アザンデは鍛冶(かじ)、壺(つぼ)作り、木彫に優れた技術をもっているが、これらの仕事は呪術(じゅじゅつ)や妖術(ようじゅつ)と結び付いている。
18世紀、ムボム川流域の住民がアボンガラという有力な氏族に率いられて流域の南部および東部を征服した。その征服は、王族の子孫が小規模な王国をいくつもつくりつつ進められた。王自身の統治する王国から地方の小王国に至るまで、王の任命する王族の一員が支配したが、王国間の戦争もたびたび起こった。
多くの家族は一夫多妻婚によって構成されており、畑と森に囲まれた家に住む。お互いの隣家が遠く離れているのは、生業に有利なためと、妖術から逃れるために必要なのだといわれる。アザンデでは、死や病気、失敗や盗難などすべての不幸や災難は妖術のせいであると考えられる。妖術の被害にあった人は、決められた手続と方法によって報復できる。アザンデの妖術の慣習は、恐れよりも怒りを、諦(あきら)めよりも恨みを強く表している。不幸は妖術の疑いを生み、それに対する憎悪がだれかに押し付けられるのである。
[松園典子]