アダムスストークス症候群(読み)アダムスストークスショウコウグン(英語表記)Adams-Stokes syndrome

デジタル大辞泉 の解説

アダムス‐ストークス‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【アダムスストークス症候群】

心臓の拍動に異常があって脳へ流れる血液が不足するために起こる意識障害。19世紀、英国の外科医アダムス(R.Adams)と内科医ストークス(W.Stokes)がそれぞれ報告。
[補説]洞不全症候群房室ブロック心室細動心室頻拍などの不整脈に伴って出現する。

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六訂版 家庭医学大全科 の解説

アダムス・ストークス症候群
アダムス・ストークスしょうこうぐん
Adams-Stokes syndrome
(循環器の病気)

どんな病気か

 急に発生した極端な徐脈(じょみゃく)、心停止、頻脈(ひんみゃく)のために、心臓から脳への血液の供給が大きく低下したり停止して、脳の酸素低下を来した場合をいいます。その結果、めまい失神けいれんが現れて死に至ることもある危険な状態です。

原因は何か

 洞不全(どうふぜん)症候群房室(ぼうしつ)ブロックによる心停止か、心室頻拍(しんしつひんぱく)心室細動(しんしつさいどう)のような心拍数の極めて速い心室性頻脈図23­G)に分けられます。

 本症候群の原因の50~60%は房室ブロック、30~40%が洞不全症候群とされます。残りは、心室頻拍(多形性心室頻拍トルサードポワンツを含む)・心室細動です。まれですが、心房粗動(しんぼうそどう)心房細動(しんぼうさいどう)でも心房から心室の伝導が過剰に亢進すると高度頻脈となり、脳の虚血(きょけつ)に陥ります。

症状の現れ方

 通常、脳の虚血症状が突然に現れます。症状の程度は、徐脈では心臓が停止している時間の長短に、頻脈では脈拍数と頻脈持続時間によって決まります。

 そのほかに、脳の虚血が原因で起こる全身けいれんや、二次的な頭部外傷がしばしばみられます。症状が消失した時点では、神経学的な異常はみられないのが特徴です。

検査と診断

 洞不全症候群で本症候群を来すのは、徐脈頻脈症候群が多いようです。頻脈も発作中の心電図波形から診断されます。いくつかの疾患では非発作時にも心電図の異常があります。QT延長症候群ブルガダ症候群、特発性心室細動WPW症候群、不整脈源性右室異形成症(うしついけいせいしょう)などです。心臓の電気生理学的検査による頻脈の誘発試験は、診断に有用です。

治療の方法

 徐脈が原因であれば、意識消失発作の予防にはペースメーカーの植え込みが必要になります。心室細動、心拍数が多い心室頻拍再発が危惧される時には、頻脈発生に際してはそれを電気的に停止させる植込型除細動器の植え込みが必要になります。(コラム)。

病気に気づいたらどうする

 症状が最初は軽くめまい程度で自然に消失しても、数時間、数日後に繰り返すおそれがあるので、早期に循環器専門医の診察を受けてください。

平尾 見三


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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アダムス‐ストークス症候群
あだむすすとーくすしょうこうぐん

心臓の拍動リズムの異常に基づく脳血流低下によって生ずる発作性の意識障害。アイルランドの内科医R・アダムズ(1827)と、同じくW・ストークス(1846)とがそれぞれ独立に発表した。以前は、心臓内の刺激伝導障害(ブロック)などに基づく高度な徐脈、あるいは心停止による意識障害をさしていたが、最近は心電図記録法の発達に伴い、心室性頻拍症、心室細動などの頻脈性の調律異常によるものも含めている。意識障害の程度は、脳血流の停止時間によって異なる。5秒以内ではめまいを感じるだけであるが、5~10秒では意識がなくなる(失神)。10秒以上停止すると、てんかん様のけいれんがおこり、呼吸も止まる。3~4分以上続くと、脳に不可逆的変化をおこして死亡することもあるので、早期の的確な処置が必要である。

 意識障害の原因によって治療が異なるため、心電図による診断が不可欠である。徐脈性の調律異常の場合には、恒久的ペースメーカーの植え込み術が行われ、頻脈性の調律異常に対しては、抗不整脈剤の投与が行われる。

[井上通敏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アダムス=ストークス症候群
アダムス=ストークスしょうこうぐん
Adams-Stokes syndrome

アイルランドの医師 R.アダムスと W.ストークスが記載した症候群。しばしば発作的に起る意識障害やめまい,重症では失神,けいれん,顔面蒼白,チアノーゼを呈し,遅脈,ときには脈拍が停止し,呼吸もときにはチェーン=ストークス型呼吸となるが,数秒から数分のうちに回復する。原因は心臓の刺激伝導障害で,一時拍動が止り,その間に脳の循環血流量が減少して,失神発作を起すためのものが多い。治療には,イソプロテレノールの内服,人工ペースメーカーの装着などが有効である。

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