アダモフ(その他表記)Arthur Adamov

改訂新版 世界大百科事典 「アダモフ」の意味・わかりやすい解説

アダモフ
Arthur Adamov
生没年:1908-70

フランスの作家。ロシアのカフカスに生まれ,ドイツ,スイスを経て,1924年パリに出てシュルレアリストたちと親交を結ぶ。ストリンドベリの影響を受けて劇作を始め,かたわらビュヒナーの《ダントンの死》を翻訳。50年《大小の作戦》と《侵入》が初演され,52年《パロディ》がロジェ・ブランによって演出されるに至って,一躍イヨネスコやベケットと並ぶアンチ・テアトル旗手として注目を浴びた。53年プランション演出の《タランヌ教授》を機に,彼の作風不条理劇から社会性の強いものへと変わり,ブレヒトの理論に共鳴して《パオロ・パオリ》《71年春》など,次第に強烈な政治性を帯びていった。
前衛劇
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アダモフ」の意味・わかりやすい解説

アダモフ
Adamov, Arthur

[生]1908.8.23. ロシア,キスロボーツク
[没]1970.3.16. フランス,パリ
フランスの劇作家。16歳のときパリに出て,シュルレアリスム運動の影響を受ける。第2次世界大戦中は強制収容所に入れられた。戦後アウグスト・ストリンドベリやフランツ・カフカの影響を受けた前衛的不条理劇を発表し,アンチ・テアトルの作家の一人として注目された。代表作『パロディー』La Parodie(1950),『侵入』L'Invasion(1950),『ピンポン』Le Ping-pong(1955),『パオロ・パオリ』Paolo Paoli(1957),『七一年春』Le Printemps 71(1961)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダモフ」の意味・わかりやすい解説

アダモフ
あだもふ
Arthur Adamov
(1908―1970)

ロシア生まれのフランスの劇作家。コーカサス地方キスロボーツクの生まれ。ロシア革命後、スイス、ドイツへ移り住み、1924年パリへ出てシュルレアリストのグループと親交を結ぶ。スウェーデンの劇作家ストリンドベリの影響を受けて劇作を始め、かたわら1948年、演出家ジャン・ビラールの依頼で、ビュヒナーの『ダントンの死』をアビニョン演劇祭のために翻訳。1950年『大小の策略』と『侵入』が演出家ロジェ・プランションによって上演されるや、一躍ベケットやイオネスコなどと並び称せられるようになる。1953年の『タレンヌ教授』を契機にブレヒトの理論に共鳴して、作風は無意識の抽象的暗喩(あんゆ)から社会性の強い劇へと変わる。1955年の『ピン・ポン』、1957年の『パオロ・パオリ』、1961年の『71年春』など強烈な政治性を帯びていった。遺作は1970年の『もしも夏が戻って来るなら』。

[利光哲夫

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世界大百科事典(旧版)内のアダモフの言及

【フランス演劇】より


【20世紀】
 20世紀フランス演劇をその変革の相においてとらえれば,大別して三つの時期を認めることができる。第1は,1913年,J.コポーによる〈ビユー・コロンビエ座〉創設から,両大戦間におけるL.ジュベ,C.デュラン,G.ピトエフ,G.バティの4人の演出家による〈カルテル四人組〉の時代,第2は,J.L.バローによるカルテルの遺産の発展と並行して50年代に起きる三つの事件,すなわちJ.ビラールによる〈民衆演劇運動〉と〈演劇の地方分化〉の成功,E.イヨネスコ,S.ベケット,A.アダモフ,J.ジュネらの〈50年代不条理劇〉の出現,そして〈ブレヒト革命〉であり,第3の時期は,68年のいわゆる〈五月革命〉によって一挙に顕在化した社会的・文化的危機の中で,演劇が体験した一連の大きな〈異議申立て〉(A.アルトーの徴の下に広がった〈肉体の演劇〉を中核とする)とその結果である。
[演出家の時代――コポーと〈カルテル四人組〉]
 演出家で集団の指導者をフランス語でアニマトゥールanimateurと呼び,20世紀を〈アニマトゥールの世紀〉と称するが,コポーはアニマトゥールの枠組みそのものを提示した人物である。…

※「アダモフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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