ノネズミ

改訂新版 世界大百科事典 「ノネズミ」の意味・わかりやすい解説

ノネズミ (野鼠)

原野森林などにすむ野生ネズミ類の総称。家畜小屋,人家,ビルなどの人為環境にすみ,生活空間や食物などの生活資源を人間に依存するイエネズミ(クマネズミ,ドブネズミ,ハツカネズミの3種)に対して,野外にすみ,生活資源を原則として自然界から得ているネズミ類を指す。カヤネズミハタネズミヒメネズミ,アカネズミ,ヤマネなど,種類数がきわめて多く,多様性に富むばかりでなく,1ha当りの生息密度がふつう数十匹と,個体数も多く,種子,葉,果実,樹皮などを食べる植物食者として,またヘビフクロウイタチキツネなどの動物食者の生活を維持する獲物として,生態系のなかで重要な地位を占める。また,大きなコロニーをつくって集団生活を送るハタネズミ,ヤチネズミなどの一部の草原生の種は,一種の人為的な草地である農地や植林地にすみついて,被害を及ぼすことがしばしばある。

 イエネズミが人間による駆除圧に直接さらされてきたことから,強度の警戒心を発達させ,人を避ける傾向が強い一方で,基本的には人間のもたらす豊富な資源に生活を依存しているのとは対照的に,ノネズミは食物など自然界の中での限られた生活資源をみずから捜しだす必要と関連して,好奇心が強く,敏しょう,活発で,人に対する警戒心も少ない。また,イエネズミがいずれも動物質,植物質を問わずさまざまな高栄養の食物を食べる雑食性であるのに対して,ノネズミは,葉食性のハタネズミ,種子食性のヒメネズミ,果実食性のヤマネといったぐあいに,狭食性であり,穴掘り木登り,走行などの運動能力を含めて,種ごとに特殊化しているのが特色である。しばしば山中の別荘や山小屋などにすみつくことがあるが,環境の人為化が進み,イエネズミが進出してくると,それとの競合に敗れて姿を消す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノネズミ」の意味・わかりやすい解説

ノネズミ
のねずみ / 野鼠
field mouse
meadow vole

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ上科に属する動物のうち森林や原野に生息するネズミ類の総称。イエネズミ(家鼠。ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種)に対する語。日本のノネズミには、アカネズミ、ヒメネズミ、カヤネズミ、エゾヤチネズミ、ヤチネズミ、ハタネズミ、スミスネズミなどが含まれる。北海道ではエゾヤチネズミ、本州ではハタネズミが、とくに植林地で大発生し被害が大きい。これらには、キツネ、テン、イタチ、フクロウ、ノスリ、ヘビ類などが天敵として重要である。しかし、ヘリコプターによる殺鼠剤(さっそざい)の散布は、広範囲に影響を及ぼすので好ましくない。食害のほか、ハタネズミやアカネズミなどは、つつが虫病や黄疸(おうだん)出血性レプトスピラ病(ワイル病)などの媒介者にもなっている。

[宮尾嶽雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノネズミ」の意味・わかりやすい解説

ノネズミ
field mouse

齧歯目ネズミ上科のうち,人家性のイエネズミを除く多くの野生のネズミの総称。キヌゲネズミ科,ネズミ科の多くの種を含み,畑地,森林などに広く分布する。農作物,森林などに大害を与えるものも少なくない。

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