日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフリカチヌ」の意味・わかりやすい解説
アフリカチヌ
あふりかちぬ / アフリカ茅渟
阿弗利加茅渟
common two-banded seabream
[学] Diplodus vulgaris
硬骨魚綱スズキ目タイ科アフリカチヌ亜科に属する海水魚。フランスからアフリカのセネガルまでの北西大西洋、地中海、黒海、カナリア諸島などの海域に分布する。体は卵形で強く側扁(そくへん)し、体高は著しく高い。吻(ふん)は突出し、先端はくちばし状にとがる。眼隔域(左右の目の間隔域)は隆起しており、鱗(うろこ)はない。上顎(じょうがく)の後端は後鼻孔(こうびこう)下方に達する。両唇は厚く、両顎の前部にはそれぞれ8本の門歯があり、斜め外方に突出する。また、両顎の側部には3列の臼歯(きゅうし)があることなどが、この亜科の特徴である。全長は45センチメートルに達する。体は銀灰色~銀褐色で、腹方は淡い。後頭部から胸びれ基部にかけて幅広い暗色横帯がある。尾柄(びへい)部からその前方にかけては暗灰色の鞍(くら)状の斑紋(はんもん)、えら蓋(ぶた)の上部には一つの暗色斑がある。体側には不明瞭(ふめいりょう)な黄金色の縦帯が多数走る。普通は水深30メートル以浅の岩礁や砂底、藻場(もば)に群生し、浅いところで似た種と小群を形成する。底生の無脊椎(むせきつい)動物、甲殻類、多毛類、軟体動物、小魚などを餌(えさ)にする。地中海では10月~1月に産卵する。底引網、地引網、延縄(はえなわ)などで漁獲されるが、資源量は減少してきている。日本には冷凍魚として大量に輸入されており、大手輸入会社ではヘダイ、タナゴ、ギンダイの商品名で流通している。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年7月19日]