アブチロン(英語表記)flowering maple
Abutilon

改訂新版 世界大百科事典 「アブチロン」の意味・わかりやすい解説

アブチロン
flowering maple
Abutilon

イチビをはじめ,茎の皮から繊維を採るために栽培される一年草または多年草を含むアオイ科の植物。熱帯を中心に全世界には約100種が知られ,ウキツリボクショウジョウカあるいは両者の雑種起源の園芸植物がアブチロンの名で,花を観賞するために栽培される。ウキツリボクA.megapotamicum St.Hil.et Naud.は高さ1mほどの低木で葉腋(ようえき)から風鈴状に垂下する赤色の萼と黄色花弁からなる花をつける。ショウジョウカA.striatum Dicks.もよく似た低木だが,花は橙色で脈の部分が濃紅色に染まる。また南アメリカ原産のこの両種の変異や交雑から選抜された通常アブチロンと総称される品種群A.hybridum Voss.には斑入りや,花色の変化がある。おもに温室で鉢植えとするが,夏季は戸外でもよい。肥料のよくきいた水はけのよい土壌が適し,繁殖は種子または挿木による。挿木は発根しやすいが,地温20℃以上がよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブチロン」の意味・わかりやすい解説

アブチロン
あぶちろん
[学] Abutilon

アオイ科(APG分類:アオイ科)の低木または草本。熱帯から温帯にかけて分布し、100種以上ある。花は葉腋(ようえき)に単生し、下垂する。花弁は5枚で鐘状になる。雄しべは多数が合着して筒状になり雌しべを包む。数品種の雑種A. hybridum Hort.が鉢栽培される。葉に白または黄斑(きふ)の入る品種もある。キフアブチロンA. pictum Walp. cv. Variegataは掌状葉に黄斑が入り、花は橙黄(とうこう)色に暗赤色の網目が入る。ウキツリボクA. megapotamicum St.Hil. et Naud.はブラジル南部原産であるが、耐寒性が強い。花は長さ4~5センチメートル、黄色の花弁と赤色の萼(がく)が美しい。葉に黄斑の入る園芸品種がある。茎は細く下垂する。繁殖はすべて挿木による。なお、繊維作物のイチビも同じ仲間である。

[高林成年 2020年4月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブチロン」の意味・わかりやすい解説

アブチロン
Abutilon; flowering maple; Indian mallow; parlor maple

アオイ科アブチロン属の総称。低木あるいは草本で,世界の熱帯および亜熱帯に約 100種が分布する。園芸的に利用されるのは,中央・南アメリカの原産種が多い。葉は心臓形のほか,掌状に深く切れ込むものなどがある。花弁は5枚。花は鐘形でやや下垂する。花色は赤,桃,橙,黄,白など。ウキツリボク A.megapotamicumのほか,交雑種のアブチロン・ヒブリドゥム A.hybridumがおもに鉢栽培される。多くの園芸品種があり,葉に白や黄の斑 (ふ) 入りも人気がある。春から秋は戸外で開花。冬は明るい室内または温室内で,なるべく 10℃以上に保って越冬させる。種類によっては,関東地方の平野部程度の気候であれば,戸外のひなたで越冬する。 20℃以上の気温であれば挿木も容易にできる。

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百科事典マイペディア 「アブチロン」の意味・わかりやすい解説

アブチロン

熱帯原産,アオイ科の一属で約100種がある。常緑の低木,つる性となるものもある。花は一般に半開きで風鈴のようにたれさがって咲くものが多い。さし木,実生(みしょう),とり木。アブチロン・メガポタミカム(ウキツリボク)はよく花をつけ,花弁は黄色,がくは紅色で美しい。アブチロン・ストリアタム(ショウジョウカ)は紅色またはかば色の花に赤褐色の美しい脈があり,温室内では年中開花する。そのほか交雑起源の園芸品種が多く栽培されている。

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