改訂新版 世界大百科事典 「アブチロン」の意味・わかりやすい解説
アブチロン
flowering maple
Abutilon
イチビをはじめ,茎の皮から繊維を採るために栽培される一年草または多年草を含むアオイ科の植物。熱帯を中心に全世界には約100種が知られ,ウキツリボクやショウジョウカあるいは両者の雑種起源の園芸植物がアブチロンの名で,花を観賞するために栽培される。ウキツリボクA.megapotamicum St.Hil.et Naud.は高さ1mほどの低木で葉腋(ようえき)から風鈴状に垂下する赤色の萼と黄色の花弁からなる花をつける。ショウジョウカA.striatum Dicks.もよく似た低木だが,花は橙色で脈の部分が濃紅色に染まる。また南アメリカ原産のこの両種の変異や交雑から選抜された通常アブチロンと総称される品種群A.hybridum Voss.には斑入りや,花色の変化がある。おもに温室で鉢植えとするが,夏季は戸外でもよい。肥料のよくきいた水はけのよい土壌が適し,繁殖は種子または挿木による。挿木は発根しやすいが,地温20℃以上がよい。
執筆者:立花 吉茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報