日本大百科全書(ニッポニカ) 「イチビ」の意味・わかりやすい解説
イチビ
いちび
[学] Abutilon theophrasti Medik.
Abutilon avicennae Gaertn.
アオイ科(APG分類:アオイ科)の一年草。ボウマ、キリアサ(桐麻)ともいう。中国名は莔麻(ぼうま)。茎は高さ約1.5メートル、葉は、心臓形で先はとがり、長さ10~15センチメートル、鋸歯(きょし)があり、互生する。夏から秋にかけて茎上部の葉腋(ようえき)に黄色の5弁花を開く。果実は輪状に十数室に分かれ、各室に種子が3個ほど入る。原産地はインド。日本には古い時代に中国から渡来したとされる。茎から靭皮(じんぴ)繊維をとるために栽培されたが、現在はほとんど栽培されず、荒れ地で野生化している。栽培は容易で、春に種を播(ま)き、3~4か月で成熟したところを抜き取り、乾かして葉を落とし、水に浸して発酵させて繊維をとる。栽培品種として明確に分類されてはいないが、茎の色によって白木(しらき)種と青木(あおき)種とに分けられる。白木種のほうが収量、質ともによい。繊維は粗くもろいので、単独で用いることはせず、ロープや麻袋をつくる際、コウマ(黄麻)に30%ほど混ぜて用いる。屑(くず)繊維は紙の原料とする。