批准
ひじゅん
ratification
署名により内容が確定した条約に対して国家の権限ある機関が,各国国内法 (通常は憲法) 上の手続に従い行う最終的確認と確定的同意を与える行為。このような批准制度は次の二つの理由に基づき形成された。一つは歴史的・技術的理由であり,かつて交通通信が未発達の時代においては,遠隔地において全権代表が合意に達した条約内容をより正確に検討するため本国に持ち帰る必要があった。もう一つは政治的理由であり,条約締結の過程に民主的統制を加えるために立法府の参加する機会を与えることが 19世紀以降一般的になったことである。批准は批准書の作成により行い,それを相手国と交換,または外交会議開催国に寄託することにより条約は正式に成立し,効力を発生する。批准権者は各国憲法の定めるところであり,日本の場合,内閣にその権限がある。国会の承認を条件とし,天皇の認証を経ることによりこれを行う (憲法7,73) 。
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批准
ひじゅん
ratification
条約を作成する最終手続で、国家が、ある条約の当事国となるための最終的意思を示す行為をいう。通常、批准書の交換(二国間条約)、寄託(多数国間条約)として行われる。条約の批准は、君主制時代には、君主の代理人の行為(全権代表の署名行為)を、本人(君主)が自己の行為として確認するもの(代理理論)として説明されてきたが、共和制のアメリカ合衆国憲法成立以降、批准行為は、大統領(行政府)の締結する条約を、議会(上院)が国民の利益のために再検討して承認(否認)する重要な行為となった。日本国憲法は条約締結権を内閣に与えるが、批准のため、事前または事後に国会の承認を必要と定めている(73条3号)。
[經塚作太郎]
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批准【ひじゅん】
条約に対する国家の最終的確認あるいは同意をいう。条約内容につき同意が成立すると代表の署名・調印が行われ,通例は,条約締結権者が議会の事前承認を得て批准し,これを文書にした批准書を交換(または寄託)して条約が発効する。ただし批准不要と明示されているものはこの限りでない。日本では内閣が批准し,天皇が認証すると定め,国会の承認は必ずしも事前でなくともよいとされている(憲法7,73条)。
→関連項目行政協定|交換公文
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ひ‐じゅん【批准】
〘名〙
① 臣下の奏上する文書または事柄に対して、君主が可否を判決して裁許すること。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉四「法律を立てたるに、墺帝は方今の時勢に適せずとて批准せず」
② 条約の締結に対する当事国の最終的確認、同意の手続。批准書の交換または寄託によって条約の効力が発生する。日本では内閣が国会の承認を得てこれを行なう。
※赤十字条約(明治一九年)(1886)一〇条「此条約は批准を受くべきものとす」
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ひじゅん【批准 ratification】
署名した条約に対し,国家として拘束されることの最終的な確認行為をいう。憲法上条約締結権を与えられたものが,批准権を有する。批准制度が存在する理由は,第1に通常,条約締結権者たる国家元首がみずから交渉にあたるわけでなく,したがって全権委員が締結権者の意思を体して合意したものであるかどうか確認する機会を持つ必要があること,第2に民主主義国家においては,国民を代表する議会が条約の内容を審査することにより,締結権者の恣意的な行為をコントロールする必要が生じたことである。
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