EU(ヨーロッパ連合)条約(原型はマーストリヒト条約)を改正したアムステルダム条約に次いで、再改正した条約。2001年2月フランスのニースで締結、2003年2月発効。改正の主眼はEUの機構改革にあった。背景には2004年の東欧と南欧の10か国のEU加盟がある。それにより15か国から25か国体制となるため、EU運営の効率と安定を維持する改革に取り組んだ。たとえば、欧州委員会(ヨーロッパ委員会)の委員数の制限(大国2名、中小国1名から各国1名へ)。欧州議会(ヨーロッパ議会)の各国議席の再配分。閣僚理事会の全会一致事項の削減(外交安保、社会保障、税制などは全会一致を維持)。閣僚理事会での多数決を三重多数決方式へ変更。同方式は、(1)過半数の国の賛成、(2)各国の人口に応じた各国加重票数による多数、(3)確認請求があれば、多数派国の人口合計がEU総人口の62%以上とならなければ多数決は成立しない、の三つを組み合わせた多数決である。この方式は、拡大後の多数中小国と少数大国との利害均衡を図るために導入された。
ニース条約はさらに、EUの安全保障政策が軍事防衛政策に及びうることも明示した。そのため同条約の批准段階で、中立政策をとるアイルランドが国民投票で批准をいったん否決した。EU諸国はEUの軍事防衛活動に同国の関与義務がないとの宣言をつけ、第二回国民投票で批准賛成を得、本条約は発効した。ニース条約は最小限の改革にとどまり、抜本的な機構改革やEUの政策の拡充等は将来に持ち越された。
[中村民雄 2018年6月19日]
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