改訂新版 世界大百科事典 「アムステルダム銀行」の意味・わかりやすい解説
アムステルダム銀行 (アムステルダムぎんこう)
Amsterdamse Wisselbank
1609年,独立直後のオランダに,イタリアのベネチアに範を取って設立された市立銀行。北ヨーロッパで最初の公立銀行で,内外の雑多な鋳貨の流通による混乱を克服することを目的としていた。すなわち,この銀行はさまざまの鋳貨を法定の換算率で預金として受け入れ,振替により預金者どうしの支払の便を図ったが,この預金の単位グルデンは,銀行グルデンと呼ばれ,実際の鋳貨に数%のプレミアムのついた独自の銀行通貨単位となった。こうしてアムステルダムの通貨は安定し,ヨーロッパ各地の商人たちも,ここに口座を開いた。この銀行は,当座貸越しを厳禁し,国や市への貸付けもほとんど見られなかった。しかし,1732年ころから東インド会社への貸付けが次第に累積して,その財務内容は悪化をたどった。とりわけ95年フランス軍がオランダを占領すると,大量の預金がハンブルクに逃げ出し,この銀行は事実上その生命を終えた。そして,ナポレオン戦争後もその地位を回復できず,1819年に正式に廃止された。
執筆者:石坂 昭雄
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