アラパキス(その他表記)Ara Pacis

改訂新版 世界大百科事典 「アラパキス」の意味・わかりやすい解説

アラ・パキス
Ara Pacis

〈平和の祭壇〉の意味。アウグストゥス帝のヒスパニアガリアからの凱旋を記念して元老院が前13年に建造発議し,前9年1月30日にローママルスの野に完成した祭壇。現在ローマのテベレ川左岸に1568年以来の発掘で出土した部材により復元されている。東西11.62m,南北10.55mの矩形周壁で囲まれた中に祭壇がある。周壁外面は,上下2段に分かれ,腰羽目部分の下段には唐草文が,上段には歴史,神話,寓意の主題を有する場面が浮彫で表されている。東西に二つの入口があり(現在は南北に変更されている),正面入口の両側に〈ロムルスレムスを見守るマルス〉〈犠牲を捧げるアエネアス〉,裏面入口両側に〈ホノス(名誉),パックス(平和),ローマの擬人像〉〈テルス(大地)の擬人像〉の各パネルがあり,両側壁には元老院議員と皇帝一族の行進の様が表されている。擬人像にみられるギリシア美術の理想化された人間像と皇帝一族のローマ的な写実主義とが混在し,当時の支配階級がローマ社会の理念的統一のため意図的に作り上げた公式美術の古典主義を示す代表作の一つである。
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百科事典マイペディア 「アラパキス」の意味・わかりやすい解説

アラ・パキス

ローマ皇帝アウグストゥスによるシリア,ガリアなどの平定を記念する祭壇Ara Pacis。〈平和の祭壇〉の意。前13年元老院が建造を発議,前9年完成。内側は果物(くだもの)や花の浮彫,外壁は上段を平和祭典の行列群像や女神,下段をアカンサス文様の浮彫で飾る。現在ローマ国立美術館,ウフィツィ,ルーブルなどに分散。→ローマの平和

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世界大百科事典(旧版)内のアラパキスの言及

【ローマ】より

… 一般的には共和政期の官制がそのまま続いたが,彼の周囲には皇帝顧問会(コンシリウム・プリンキピスconsilium principis)が置かれ,新たに親衛隊長(プラエフェクトゥス・プラエトリオpraefectus praetorio)などの官職がつくられた。ローマ市には消防隊,水道管理官,食糧管理官が置かれ,新しい建造物(例えば〈平和の祭壇(アラ・パキス)〉,アウグストゥス広場など)も建てられて,帝国の首都にふさわしいものに生まれ変わった。アウグストゥスはまた,貴族の結婚と出産・育児を奨励し,風紀の立直し,古来の国家宗教の復興を図った。…

【ローマの平和】より

…前10年のアウグストゥスによるパクス祭祀の導入が最初であったが,前44年以来貨幣面にもパクスは刻まれていた。こうしてローマでは,もともとパクスはアウグストゥスのカリスマ性と結びつき,前13年の元老院議決により〈アウグストゥスの平和の祭壇(アラ・パキス・アウグスタエ)〉(アラ・パキス)が設置され,後75年にはウェスパシアヌスによって〈平和の神殿(テンプルム・パキス)〉も建てられた。女神パクスはブドウの枝,豊穣の角,ゲッケイジュ,槍などを象徴として持って図像に現れる。…

※「アラパキス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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