アリドリ(その他表記)antbird

翻訳|antbird

改訂新版 世界大百科事典 「アリドリ」の意味・わかりやすい解説

アリドリ (蟻鳥)
antbird

スズメ目アリドリ科Formicariidaeの鳥の総称。この名は,この科の一部の種がグンタイアリの列のあとについて回り,アリによって追い出された昆虫,カエル,トカゲなどをとる習性があることによる。約50属230種からなり,そのうち中央アメリカには約40種が分布し,南アメリカには中央アメリカ特産の2種を除くすべての種が分布している。全長8~36cmだが,大部分の種は全長10~20cm大である。どの種も飛翔(ひしよう)力はあまり強くない。翼は比較的短く,頭部は体の割りに大きく,全体としてずんぐりした感じの体型をしている。くちばしは太くじょうぶで,上くちばしの先端は鉤(かぎ)状に曲がり,小動物をくわえ出したり,しっかり捕獲するのに適している。雌雄異色。雄のほうが雌よりやや目だつとはいえ,どの種も白色黒色灰色,赤褐色,黄褐色などのじみな羽毛をしている。大部分の種はアマゾン流域を中心とする低地の熱帯多雨林にすみ,地上生のものから樹冠にいるものまである。巣は葉や茎を集めて木のまたにつくることが多いが,樹洞や地上に営巣する種もある。1腹2~3個の卵を産む。雌雄ともに抱卵,育雛(いくすう)をする。しかし詳しい生態が研究されている種はほとんどない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリドリ」の意味・わかりやすい解説

アリドリ
Thamnophilidae; antbirds

スズメ目アリドリ科の鳥の総称。全長 9~36cmで,約 230種からなる。大部分の種は,白,灰,黒,褐色などの羽毛をもち,全体として地味な鳥である。は短く,脚は長め。はやや平たく,先端が鉤状になっている。中央アメリカから南アメリカに分布し,地上性の種や,森林の下層域や中層域,樹冠でそれぞれ生活する種,人家近くの茂みに生活する種などのすみ分けがある。飛翔力が弱いので長距離の渡りをする種はない。その名は,グンタイアリ行進によって追われた昆虫や小動物をねらって食べる習性からきている。すべての種ではないが,少なくとも 18種は食べ物をアリの行進から追い出される獲物に依存している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリドリ」の意味・わかりやすい解説

アリドリ
ありどり
antbird

鳥綱スズメ目アリドリ科に属する鳥の総称。同科Formicariidaeは中央・南アメリカに分布し、全部で約220種いる。全長9~36センチメートルほどで、全体に褐色や黒のじみな羽色をしている。この科のなかには、グンタイアリの行列について回り、アリに追われて飛び出してくる昆虫をとらえて食べる鳥がいることから、アリドリという名がつけられた。またこの科にはアリモズとかアリヤイロチョウなど、「アリ」ということばの次に、この科の分布しない北アメリカや旧世界の鳥の名を続けたものが多いが、それらは同様の名のついた鳥と互いに似た外観や習性をもっている。この科の詳しい生態はあまりよく知られていないが、一般に低地や山地の森林に1年を通じて1羽か2羽で暮らし、よくさえずる。深い森林内にすむため、姿よりも鳴き声で気づかれる場合が多い。

[樋口広芳]

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