改訂新版 世界大百科事典 「アリバチ」の意味・わかりやすい解説
アリバチ (蟻蜂)
velvet ant
膜翅目アリバチ科Mutillidaeに属する外部捕食寄生性のハチの総称。カリウドバチより原始的で,巣はつくらず寄主を刺針で麻痺させてからその体表に卵を産みつける。雄は一般に有翅だが雌は無翅。体は暗色の毛に覆われ,腹部は白色,黄色,赤色などの密な毛が横帯を形成する。体長3~30mm,通常雄のほうが大きい。世界中に分布し,とくに熱帯と亜熱帯に多い。ほとんどが膜翅目の有剣類に属するハチ類の前蛹(ぜんよう)やさなぎの体表,またはそれらの入っている繭の内面に卵を産みつける。獲物はほとんど動かないので,麻痺させる必要はなく,産卵管は産卵と産卵のために繭を貫通することだけに使われる。日本産のミカドアリバチMutilla europaea mikadoは,コマルハナバチとトラマルハナバチを寄主とする。
執筆者:山根 爽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報