アリ(蟻)植物 (ありしょくぶつ)
myrmecophyte
植物体の一部をアリの生活場所として提供し,アリと共生関係にあるといわれる植物で,熱帯地方に多い。アリに住居を提供する代償として植物体が外敵から保護されているといわれるが,具体的に共生関係が確かめられた例はない。熱帯アジアのアリノストリデMyrmecodia tuburosa(アカネ科)は樹木に着生しており,膨れた茎は若い時には貯水器官であるが生長するにつれて乾き,そこにアリが巣をつくる。アカネ科には,ほかに,熱帯アジアのアリノスダマHydnophytum montanumなどがあり,タデ科のTriplaris americana,トケイソウ科のBarteria fistulosaも有名な例である。マメ科のアリノスアカシアAcacia sphaerocephalaは中央アメリカの木本植物で,葉柄の基部に托葉の変形した大型のトゲがあり,その中にアリがすんでいる。熱帯アジアのアリシダMyrmecophila crustaceaなど数種のシダでは根茎の内部にアリがすんでいる。アリ植物は特定の分類群にかたよることなく,維管束植物のいろいろの群にその例がみられる。
執筆者:岩槻 邦男
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アリ植物
ありしょくぶつ
体内に住み込んだアリと共生的生活をする植物をいい、アリの多い熱帯に分布している。アリは植物から住居やときには食物をも与えられ、植物はアリによって外敵から守られるという相利共生の場合と、アリの受ける利益のほうが目だつ場合とがある。ブラジルの森林にはクワ科の小高木アリノスノキCecropia adenopusがあり、幹の内側の空洞はある種のアリAzteca mülleriの巣になっている。この木の葉をハキリアリが切りにくると、居住するアリは立ち向かってその食害を防ぐ。葉柄基部の栄養に富む小粒体は、居住アリの食糧にもなっている。熱帯アジアには、アリ植物としてアカネ科のアリノトリデ属Myrmecodia、アリノスダマ属Hydnophytumがある。これらは木に着生しているが、茎の下部が塊状に膨れ、内部のアリによってつくられた迷路状の孔道が巣になっている。また、トウダイグサ科オオバギ属Macarangaや着生シダにもアリ植物のものがある。中央アメリカのマメ科アリノスアカシアAcasia sphaerocephalaなどの刺(とげ)の膨大、小粒体の発達も、アリとの関係での適応・分化と考えられる。
[斎藤 紀]
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アリ植物【アリしょくぶつ】
アリと共生関係にある植物。熱帯地方に多い。アリは植物体の一部を巣として利用し,植物はアリによって他の動物から保護されるといわれる。アカネ科のアリノスダマやアリノストリデ,マメ科のアリノスアカシア,シダ植物のアリシダなど多様な植物群に見られる。
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世界大百科事典(旧版)内のアリ植物の言及
【アリ(蟻)】より
…マレー半島のミツデオオバギ(トウダイグサ科)は幹や枝の芯に空洞があり,その中にマカランガシリアゲアリがすんでいて,托葉にできる微小な食体や空洞内にすむカイガラムシの排出物を食料として生活している。アリが植物体をすみかとし,両者の間に特別な関係を生じたものを[アリ植物]といい,熱帯地方に見られる。 一つのコロニーに含まれている働きアリの数は日本産のクビレハリアリで約20匹,クロヤマアリでは数千匹,[エゾアカヤマアリ](イラスト)で数万匹程度であるが,アフリカ産のサスライアリや中南米産のグンタイアリ(イラスト)には数百万匹に及ぶものがある。…
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