改訂新版 世界大百科事典 「アルジャー」の意味・わかりやすい解説
アルジャー
Horatio Alger, Jr.
生没年:1832-99
アメリカの作家。マサチューセッツ州チェルシーに牧師の子として生まれる。生家はアメリカで最も古いピューリタンの家系の一つ。16歳でハーバード大学に入学,文学への関心は早くから芽生えていた。卒業後は教師をするかたわら創作に励み,また神学を学ぶ。1864年から児童文学のジャンルを試みるが,生活のためブルースターのユニテリアン第一教会の牧師を務める。66年ニューヨークに出て本格的な文筆生活に入り,翌年1月から雑誌連載を始めた《おんぼろディックRagged Dick》により一挙に少年文学作家としての名声を確立した。靴磨き少年が誠実と勤勉により向上する〈おんぼろから金持へ〉の明るい立身出世の物語は,南北戦争後の〈めっき時代〉のアメリカで大いに読まれ,少年たちの夢,理想ともなる。100冊にのぼる小説はすべて芸術性よりも教訓性の強い作風だが,彼の道徳的真摯さは,芸人児童虐待のパドローネ制度廃止の具体的な行動などによってもうかがえる。ほかに《運と勇気》(1871-75)シリーズなどがある。
執筆者:滝田 佳子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報