改訂新版 世界大百科事典 「アルメンデ」の意味・わかりやすい解説
アルメンデ
Allmende[ドイツ]
ヨーロッパ中世で典型的に発達した,共同体が所有しその成員が用益権を持つ共同地。個別的に所有・用益される屋敷地や,個別的に所有されるが共同体規制のもとに用益される開放耕地と比べて,共同的関係が最も強い空間をなす。農村と都市を通じて存在し,複数の共同体にまたがって形成されることも多い。道路,水流,墓地などを含むこともあるが,主たる土地種目は,森林と荒蕪地(こうぶち)で,家畜の放牧,木材・刈敷・飼料の採取,狩猟などによる用益は,この土地を分割せずに行われることが多かった。用益権は放牧しうる家畜頭数や,伐採できる木材量などとして具体的に規定され,当初は成員に属する人的権利であったが,後には,屋敷地,耕地などに付属した物的権利となる傾向を示した。成員資格の規定方式や,成員が占守する土地の広狭によって,用益権の大きさには成員間での相違が生じえた。アルメンデは古くから多様な形で存在したが,小農民間の制度として普及するのは,村落共同体が確立する中世盛期であった。この時期から,共同体上層部による用益権独占への下層部の抵抗,君主や領主による収奪や租税賦課に対する共同体の反抗など,アルメンデは多様な闘争の場となった。中世末期以降は,共同体の解体にともなって,アルメンデも私的所有と個別的用益にゆだねられ,19世紀までに基本的には解消する。しかし,スイスの森林地帯などいくつかの地域では,今日においても重要な位置を保っている。
執筆者:森本 芳樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報