日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンダルシアの犬」の意味・わかりやすい解説
アンダルシアの犬
あんだるしあのいぬ
Un Chien Andalou
フランス映画。1928年作品。これがデビュー作になる監督ルイス・ブニュエルと画家サルバドール・ダリが製作。シュルレアリスム運動の最盛期に、美術や文学などと呼応するように盛んに試みられたアバンギャルド映画の代表作。上映時間16分ほどのなかで、女性が剃刀(かみそり)で眼球を切り裂かれる冒頭のシーンに始まり、切断され路上に転がった右掌を杖(つえ)でつつく若い女、ロバの死体が乗せられたピアノとそれを引っ張る男、手のひらに群がる蟻など、衝撃的な映像が積み重ねられていく。ブニュエルとダリが互いに出し合ったイメージ群をもとに、表向きは男と女の愛情のもつれをたどるような体裁をもたせつつ、実はいっさいの合理的な展開や意味を排除する。ちょうど夢をみているような世界である。そのなかに人間の不合理な衝動や欲動の生起がとらえられている。
[出口丈人]