家庭医学館 「いびきと対策」の解説
いびきとたいさく【いびきと対策】
いびきは、睡眠中に生じる異常な呼吸音で、上気道(じょうきどう)(鼻から喉頭(こうとう)に至る空気の通り道)の一部が正常の状態よりも狭くなったときにおこります。たとえば、鼻の病気や扁桃肥大(へんとうひだい)(「扁桃肥大(口蓋扁桃肥大)」)のある人、極端に肥満している人は、毎晩のようにいびきをかきます。
一方、上気道に障害のない人でも、過労、過度の飲酒の際に、睡眠中に上気道周囲の筋肉が通常よりもひどくゆるんで上気道狭窄(じょうきどうきょうさく)が生じ、いびきをかきやすくなります。
◎いびきの種類
いびきは音響学的に、振動型と狭窄型に大別されます。
振動型は、軟口蓋(なんこうがい)(上あごのやわらかい部分)や口蓋垂(こうがいすい)(のどちんこ)が振動するために生じる音で、比較的低い周波数です。
規則正しいリズミカルないびきで、ほとんど呼吸障害はなく、からだに悪影響はありませんが、団体旅行や入院の際に、騒音として問題となります。
これに対して狭窄型は、扁桃肥大やアデノイド増殖症(ぞうしょくしょう)(「アデノイド増殖症(腺様増殖症/アデノイド/咽頭扁桃肥大症)」)、舌根沈下(ぜっこんちんか)などで狭くなった空間をむりやり空気が通過するためにおこる音で、周波数が高く、非常に苦しそうな印象を受けます(上気道抵抗症候群(じょうきどうていこうしょうこうぐん))。
このようないびきをかく人は、ときとして呼吸が深くなったり浅くなったり(低換気)をくり返し、極端な場合は、数十秒間の呼吸停止が頻繁(ひんぱん)におこることがあります(睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)(「睡眠時無呼吸症候群」))。
このような呼吸の乱れにともない、胸腹部の激しい上下動がおこり、血圧や心拍の乱れも生じます。これが長年におよぶと、心肺機能に異常をきたすようになります。
さらに睡眠の質も悪化し、熟睡感が得られず、起床時の頭痛や昼間の眠けがおこるようになってきます。すなわち狭窄型のいびきは病的で、積極的な治療が必要といえます。
◎いびきの対策
軽症のいびきは、睡眠中に側臥位(そくがい)(横向き)や腹臥位(ふくがい)(うつぶせ)の姿勢をとると、軽快もしくは消失する場合があります。
睡眠中に口を開く癖のある人は、粘着テープを口に張りつけ、できるだけ鼻呼吸を促すようにすればいいでしょう。ただし鼻づまりの強い人は、この方法にはむりがあります。
市販のいびき抑制薬は、軽度のいびきには有効のようです。
肥満している人は、標準体重まで減量することがたいせつです。
これらの対策を講じても、いびきが軽快しない場合は、中等度以上のいびき症で、つぎのような治療が必要となってきます。
鼻の病気、扁桃肥大、アデノイド増殖症などのはっきりとした原因のある人は、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)で治療を受けることが必要です。
このような原因がないにもかかわらず毎晩いびきがおこるような人は、一度、いびきの専門医を受診することをお勧めします。
専門医については、最寄りの耳鼻咽喉科や保健所に問い合わせてみるとよいでしょう。
受診する際には、いびきを録音したカセットテープなどを持参すると診察の参考になります。
重症のいびきの人は精密検査が必要で、数回の外来通院が必要でしょう。場合によっては、数日間の検査入院が必要になることもあります。