イブン・クタイバ(その他表記)Ibn Qutaibah, `Abd Allāh ibn Muslim al-Dīnawarī

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イブン・クタイバ」の意味・わかりやすい解説

イブン・クタイバ
Ibn Qutaibah, `Abd Allāh ibn Muslim al-Dīnawarī

[生]828. クーファ
[没]889. バグダード
イラン系のアラビア語文学者,言語学者。アラビア語文学の黄金時代に生れ,バグダードで言語学の教授をしながら暮した。ジャーヒズと並ぶアラビア語散文の大家で,後世のアラビア語文学に影響を及ぼすところがきわめて大きい。ペルシアの歴史文学や宮廷文学の要素をも取入れ,洗練された表現力豊かなアラビア語散文体を大成した。『情報の泉』`Uyūn al-akhbārは 10巻から成る豊富な逸話集で,アラビア語随筆集の典型。『詩と詩人たちの書』 Kitāb al-shi`r wa'l-shu`arā'は純粋な審美的見地から,古今の詩人たちの代表作を選び,独自の立場からの序説をつけたもの。『知識の書』 Kitāb al-ma`ārifは宇宙の創造から説き起したアラビア語最初の世界史。『書記アダブ』 Adab al-kātibは書記官たちに必要な言語学的知識その他を説いたもの。そのほか多くの名著を残した。

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改訂新版 世界大百科事典 「イブン・クタイバ」の意味・わかりやすい解説

イブン・クタイバ
Ibn Qutayba
生没年:828-889

イラン系の歴史家,文学者。クーファ生れ。イラン西部のディーナーワルで20年ほど裁判官を務めたのちバグダードに移り,晩年まで教職にあって二十数冊の著書を残した。アッバース朝初期までの概説史《知識の書》,評論集《詩と詩人の書》,古代からの詩文を集めた《物語の源泉》,文章作法を論じた《書記の教養》などのほかに,コーランハディースの注釈書や神学論集もあり,著作内容は多面にわたっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブン・クタイバ」の意味・わかりやすい解説

イブン・クタイバ
いぶんくたいば
Ibn Qutaybah
(828―889)

アラブの人文学者。トルコ人を父にイラクに生まれる。アラブ語学、ハディース(預言者ムハンマドの言行録)に関する学問などを幅広く学んだのち、しばらくディーナワルで判事を務めた。その後、バグダードで教壇に立って一生を過ごす。文法学者としてはバスラ、クーファ両派の流れを取り入れ、バグダード派に属す。『知識総論』『詩と詩人論』『文人必携』などの言語と文学に関する著作のほか、『諸史精髄』という歴史に関する大作、さらにはコーランやハディースなどに関する宗教的著作もある。

[内記良一 2018年6月19日]

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