ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イブン・クタイバ」の意味・わかりやすい解説
イブン・クタイバ
Ibn Qutaibah, `Abd Allāh ibn Muslim al-Dīnawarī
[没]889. バグダード
イラン系のアラビア語文学者,言語学者。アラビア語文学の黄金時代に生れ,バグダードで言語学の教授をしながら暮した。ジャーヒズと並ぶアラビア語散文の大家で,後世のアラビア語文学に影響を及ぼすところがきわめて大きい。ペルシアの歴史文学や宮廷文学の要素をも取入れ,洗練された表現力豊かなアラビア語散文体を大成した。『情報の泉』`Uyūn al-akhbārは 10巻から成る豊富な逸話集で,アラビア語随筆集の典型。『詩と詩人たちの書』 Kitāb al-shi`r wa'l-shu`arā'は純粋な審美的見地から,古今の詩人たちの代表作を選び,独自の立場からの序説をつけたもの。『知識の書』 Kitāb al-ma`ārifは宇宙の創造から説き起したアラビア語最初の世界史。『書記のアダブ』 Adab al-kātibは書記官たちに必要な言語学的知識その他を説いたもの。そのほか多くの名著を残した。
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