ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イリッチ」の意味・わかりやすい解説
イリッチ
Illich, Ivan
[没]2002.12.2. ドイツ,ブレーメン
オーストリア生まれの哲学者,ローマ・カトリック教会の司祭。ユーゴスラビア(ダルマチア)系の富裕な家庭に生まれ,ウィーン,ザルツブルク,イタリアのフィレンツェ,ローマで学んだ。1951年司祭となる。初めアメリカ合衆国のニューヨークでプエルトリコ人のために働いて成功を収め,スペルマン枢機卿の信任を得た。ところがその後のプエルトリコでの活動が現地教会の反発を招いたため,メキシコのクエルナバカに移って国際文化資料センター Centro Intercultural de Documentación; CIDOCを設立。ここを拠点にラテンアメリカの宗教,社会,教育活動について独自の洞察に基づく指針を示し,現代の工業化社会や制度化した教会を批判するとともに,義務教育の廃止,脱学校化と自主学習を提唱した。CIDOCには多くの人材が集まり,国際的研究交流の場となった。しかし教会内の保守派に動かされたローマ教皇庁は,1968年ローマでイリッチを査問,翌 1969年には CIDOCへのローマ・カトリック教会聖職者の参加を禁じた。そのため同年還俗し,研究,著作活動を続けた。主著は『脱学校の社会』Deschooling Society(1971),『自由の奪回』Tools for Convivality(1973),『エネルギーと平衡』Energy and Equity(1974)。
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