インドネシア舞踊(読み)インドネシアぶよう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インドネシア舞踊」の意味・わかりやすい解説

インドネシア舞踊
インドネシアぶよう

インドネシアの舞踊は,地域,民族,言語文化によってジャワ島,バリ島,ほかの島嶼部に大別される。ジャワ島にはジョクジャカルタスラカルタ (ソロ) ,スンダ,東ジャワ様式,バリ島には北バリ,南バリ様式,島嶼部にはスマトラ,カリマンタン,スラウェシ様式など各島に種々の舞踊様式がある。舞踊は音楽とともに宗教・政治の儀礼において重要な役割を果してきた。 (1) ジャワ島 およそ1世紀から 10世紀にわたるヒンドゥー時代には,中部ジャワを中心に舞踊が演じられていたことはボロブドゥール遺跡や東ジャワから出土した碑文などに見出すことができる。当時宮廷では女性舞踊ロンゲン,『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』『パンジー』などの物語の舞踊劇ワヤン・オラン,仮面舞踊劇ワヤン・トペンが演じられた。 14世紀のイスラム王国マジャパイトのハヤム・ウルク王が舞踊に精通していたことは古代ジャワ詩『ナガラクルタガマ』にも記されている。 16世紀,西ジャワを中心としたイスラム王国では仮面舞踊劇ラケッ,トペン・ババカン,竹馬踊りクダ・ルムピンが知られる。一方中部ジャワではジョクジャカルタとスラカルタの両王宮で舞踊は洗練され,芸術性の高いものとして発達し,いまも伝統的に継承されている。女性舞踊のブダヤスリンピのほか,『ダマルウーラン』物語の舞踊劇ランゲン・ドゥリヤも有名。民衆の娯楽としてトペン,竹馬踊りクダ・クパン,女性 (ときには女装した男性) が街頭で演じるレデェクや舞踊劇ケトプラック,ルドゥルックがある。 1961年に始められたプランバナン寺院の野外舞台で演じられるスンドゥラタリ・ラーマーヤナは有名である。 (2) バリ島 宗教儀礼と離すことのできない関連をもち,ラセム王とランクサリ伝説の踊りレゴンをはじめ舞踊劇ケチャ,パンジー物語の舞踊アルジャ,神々への献納舞踊ペンデット,仮面舞踊トペン・パジェガン,戦士舞踊バリス,善霊神による平和を象徴した舞踊バロン,架空の悪鬼の退治を舞踊化したチャロン・アランなど数多くの舞踊がある。 (3) スマトラ島 イスラム色の濃い舞踊で,南部の女性舞踊ゲンデン・スリビジャヤ,アチェの憂国士の踊りセウダディがある。ほかに,カリマンタンにはダヤク族の舞踊として戦士舞踊マンダウ,収穫祝いの踊りガンダルが知られている。

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