ケチャ(英語表記)kecak

デジタル大辞泉 「ケチャ」の意味・読み・例文・類語

ケチャ(〈インドネシア〉kecak)

インドネシアバリ島民俗芸能円陣を組んだ男性身振りを伴う合唱に合わせて、ラーマーヤナなどを題材とする舞踊劇を行う。猿をまねた激しい叫び声と複雑なリズムが特徴。

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精選版 日本国語大辞典 「ケチャ」の意味・読み・例文・類語

ケチャ

  1. 〘 名詞 〙 ( [インドネシア語] kecak, ketchak ) インドネシアのバリ島に伝わる民俗芸能。火山爆発旱魃を恐れての祈りに、インド伝来の叙事詩ラーマーヤナ」が結びついて芸能化されたといわれる。舞踊劇に合わせ、円陣を組んだ男声コーラスが「チャクチャク」という複雑なリズムの奇声を上げる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ
kecak

インドネシアのバリ島に見られる身体演技を伴った男性合唱。チャッ,チュ,チなどの意味のない音を素材にしているところから,この名が付けられた。ケを略してチャッcakと呼ぶ場合もある。100~200人が五つ六つのグループに分かれてそれぞれ違ったリズムを唱え,全体としては複雑で迫力のある響きとなる。1人がシュルル・プン・プン・プン(ガムランゴング擬声語)と4拍子を刻んで速度や強弱を統制するが,指揮者はいない。本来は,サンヤンsanghyangと呼ばれる疫病平癒を願う呪術的な踊りの伴奏であり,男たちは入神状態の踊り手を車座に囲んで体を左右にゆすって,半ば忘我で絶叫する。20世紀の初めごろから,ケチャをドラマ化することが行われ,現在では,インドの叙事詩《ラーマーヤナ》を題材とする舞踊劇に仕立てたものが有名であり,多くのグループが活動している。地面に座った男たちの円の中に踊り手たちが登場し,物語の推移を太い声の太夫が語る。上演は夜,寺院の中庭で行われ,照明はたいまつの光だけで,きわめて劇的である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ
けちゃ
kecak

インドネシアのバリ島で行われる芸能。本来、疫病平癒や魔除(よ)けを目的とする憑依(ひょうい)舞踊サンヤンsanghyangにおける男声合唱を意味していたが、1930年代にオランダ人がこの男声合唱をインドの叙事詩『ラーマーヤナ』を題材とする舞踊とあわせ、今日一般に知られているケチャの形にした。猿の軍団に見立てられた200人前後の男性が円形に座り、その中央で舞踊が行われる。男性コーラスは手や体を動かしながら、なかば忘我状態になってガムランのさまざまな楽器を擬音的に模倣する。その身ぶりやことばの多くは悪霊を追い払うための呪文(じゅもん)からきているといわれる。チャ、チュ、チなどの音を多用し、グループ別に異なるリズムを入れ子式に、いわゆるホケット(旋律に休符を挟んで短い断片にする技法)のように歌う。観光客向けのケチャも含めて、バリ島南部のいくつかの村で上演されている。わが国では、芸能山城(やましろ)組の演奏がよく知られている。

[卜田隆嗣]


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百科事典マイペディア 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ

インドネシア,バリの男声合唱劇。その前身は宗教的なトランス舞踊のサンヒャンsanghyangで,トランスを促すためにガムラン・スアラgamelan suara(声のガムラン)という男声合唱が行われ,激しい音や身振りで悪霊を封じ込めようとした。これを母体として,ドイツ人シュピースWalter Spiesとバリ人リンバックLimbakが,ケチャによる新しい《ラーマーヤナ物語》を作って1933年にボナ村で初演したのが,今日の形態の始まり。近年では悪疫退散という意味合いは薄れ,観光用の芸能として名高い。
→関連項目バリ[島]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ
Ketjak

インドネシアのバリ島に伝わる舞踊劇。呪術的な駆除祭儀のサンヤンと青年少女が掛合で歌うジャンゲルの男性合唱から発達した。 1933年ドイツの画家ウォルター・スピーシズノが『ラーマーヤナ』物語を挿入し劇的に構成したものが有名。およそ 150人の男性が上半身裸で燭台を囲み,すわって円陣をつくる。4種のリズム・パターンで歌われ,楽器は用いない。ラーマ王の妻シーターの誘拐からラーマを援護する猿軍と,悪鬼ラバナ軍との戦いを,「チャッ,ケチャッ,ケチャッ,ケチャ」と合唱し,リズムとともに上半身,両手で身ぶり表現をする。バリ島の村々にはさまざまなケチャが伝承されている。

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音楽用語ダス 「ケチャ」の解説

ケチャ[ketjak]

インドネシアのバリ島の民俗芸能。男性が車座になって行う合唱。合唱といってもメロディを歌うのではなく、大人数で「チャッ」というような叫び声をリズミカルに繰り返して、独特のエネルギッシュで幻想的な雰囲気をかもしだす。車座の中心では古代ヒンドゥーの叙事詩ラーマヤーナが演じられる。

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