ケチャ(読み)けちゃ(英語表記)kecak

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ
けちゃ
kecak

インドネシアのバリ島で行われる芸能。本来、疫病平癒や魔除(よ)けを目的とする憑依(ひょうい)舞踊サンヤンsanghyangにおける男声合唱を意味していたが、1930年代にオランダ人がこの男声合唱をインドの叙事詩ラーマーヤナ』を題材とする舞踊とあわせ、今日一般に知られているケチャの形にした。猿の軍団に見立てられた200人前後の男性が円形に座り、その中央で舞踊が行われる。男性コーラスは手や体を動かしながら、なかば忘我状態になってガムランのさまざまな楽器を擬音的に模倣する。その身ぶりやことばの多くは悪霊を追い払うための呪文(じゅもん)からきているといわれる。チャ、チュ、チなどの音を多用し、グループ別に異なるリズムを入れ子式に、いわゆるホケット(旋律休符を挟んで短い断片にする技法)のように歌う。観光客向けのケチャも含めて、バリ島南部のいくつかの村で上演されている。わが国では、芸能山城(やましろ)組の演奏がよく知られている。

[卜田隆嗣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケチャ」の意味・わかりやすい解説

ケチャ
Ketjak

インドネシアのバリ島に伝わる舞踊劇。呪術的な駆除祭儀のサンヤンと青年少女が掛合で歌うジャンゲルの男性合唱から発達した。 1933年ドイツの画家ウォルター・スピーシズノが『ラーマーヤナ』物語を挿入し劇的に構成したものが有名。およそ 150人の男性が上半身裸で燭台囲み,すわって円陣をつくる。4種のリズム・パターンで歌われ,楽器は用いない。ラーマ王の妻シーターの誘拐からラーマを援護する猿軍と,悪鬼ラバナ軍との戦いを,「チャッ,ケチャッ,ケチャッ,ケチャ」と合唱し,リズムとともに上半身,両手で身ぶり表現をする。バリ島の村々にはさまざまなケチャが伝承されている。

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