日本大百科全書(ニッポニカ) 「スンダ」の意味・わかりやすい解説
スンダ
すんだ
Sunda
インドネシア、ジャワ島西部を本拠地とし、スンダ語を母語とするマレー系の民族。インドネシアではジャワ人に次ぐ約2700万(1990推計)の人口をもつ。西ジャワには4世紀ころにヒンドゥー的国家の存在を示す碑文が残され、その後16世紀には北海岸にバンドン王国が興って、オランダ東インド会社と争った。またバンテンを中心とする内陸部はジャワ人の王国とつながりがあり、伝説的なパジャジャラン王国の物語が伝承のなかに広く伝えられるが、王国実在の確証はない。水田耕作を生業の中心とするが、18世紀からオランダ人の手でプランテーションが内陸部につくられ、いまでもそうした農園で茶やゴムなどが栽培されている。
文化はジャワ人のそれに類似しており、長くイスラム教の影響を受けた。現在は住民の多くがイスラム教徒であり、イスラムの教義が土着の信仰や慣習と融合して一体となっている。それはジャワ人の場合と同じように、通過儀礼やスラマタン(共餐(きょうさん)儀礼)、稲の神をめぐる稲作儀礼などにみられる。親族関係は双系的で、一般に結婚後は新居に移り、その核家族を中心に、夫方・妻方につながる親族のまとまりが、社会生活のうえで重要である。また木偶(でく)人形を使った人形劇ワヤン・ゴレックや、日本の胡弓(こきゅう)や琴に似た楽器を伴う独特の音階の民謡、「吉四六(きっちょむ)話」に似た民話クバヤンなどが親しまれている。またスンダ語で書かれた新しい文学も多く生み出されている。
[鏡味治也]
『クンチャラニングラット編、加藤剛・土屋健治・白石隆訳『インドネシアの諸民族と文化』(1980・めこん)』