オラン(英語表記)Oran

デジタル大辞泉 「オラン」の意味・読み・例文・類語

オラン(Oran)

アルジェリア北西部の港湾都市地中海に面する。アラビア語ワフラーン。10世紀にスペインイスラム教徒によって建設され、オスマン帝国支配を経て、フランス植民地として発展。独立まで、ヨーロッパ人が多かった。カミュの「ペスト」の舞台。マグレブ系大衆音楽ライの発祥の地。

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改訂新版 世界大百科事典 「オラン」の意味・わかりやすい解説

オラン
Oran

アルジェリア北西部,同国第2の都市で,同名県の県都。アラビア語ではワフラーンWahrān。人口70万5335(1998)。10世紀初め,アンダルスイベリア半島のイスラム化地域)の船乗りによってアフリカとの商業基地として建設される。イスラム商人マルセイユベネチアバルセロナなどのキリスト教徒の商人の来住によってにぎわったが,特に1437年,トレムセンザイヤーン朝(アブド・アルワード朝)によって占領されると,ヨーロッパの工業製品とアフリカの金,象牙,奴隷などとの交易活動が活発に行われた。しかし,15世紀末に,キリスト教徒に再征服されたアンダルスからイスラム教徒が多数流入し,さらに1509年スペインに占領(-1708)されると衰退した。その後,オスマン帝国の支配(1708-),再びスペインの支配(1732-),大地震による都市の1/3の破壊(1790),スペイン人の退去とオスマン帝国の再支配(1792-),などの歴史を経て1831年にフランスに占領される。フランスのアルジェリア支配の強化とともに,しだいに軍事基地化し,第2次大戦中は連合国の海軍基地として利用された。戦後は,大型のヨーロッパの商船が出入りし,農産物輸出港,建築資材,紙,食料などの輸入港として利用されている。また,乳製品,オリーブ・魚などの加工業,織物・機械・造船・ガラス工業などの中心都市でもある。丘の上の旧市街に立つカスバ(城砦),モスク,聖者の墓廟などと,その東側に広がる近代的な街路と官庁,ホテルなどが好対照をなしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オラン」の意味・わかりやすい解説

オラン
おらん
Oran

北アフリカ、アルジェリアの地中海沿岸西部、オラン湾に面した港湾都市。オラン県の県都。アラビア語ではワフラーンWahranという。人口65万5852(1998)、116万5687(2008センサス)。同国第二の人口をもち、西部地域の商工業、文化の中心地である。港を中心にヨーロッパ風市街が広がり、北西の山腹にかけ伝統的な市街がある。西側にメルセル・ケビル軍港がある。

 10世紀にスペイン系イスラム教徒により建設された。フランス植民地時代、アルジェリア3県のうちのオラン県の県庁所在地となり、近代的港湾施設、鉄道も建設され、農産物、鉱産物の輸出、工業製品の輸入港として発展した。背後のオラン平野にはヨーロッパ人が多数入植し、全国的にもヨーロッパ人の経営する農園がもっとも多い地域で、オランは独立までアルジェリアでヨーロッパ人人口が多数を占める唯一の都市であった。スペイン系移民の割合が多く、スペイン風の建物が残り、市街の中心に広場があるさまは、南アメリカの都市によく似ている。カミュの名作『ペスト』の舞台として知られる。独立後多くのヨーロッパ人は引き揚げたが、アルジェと同様に人口集中が続き、20年間に人口は3倍以上に増加した。工業は機械、化学、食品、繊維などがある。オラン総合大学の建設には日本も協力した。南西8キロメートルにはラ・セニア国際空港がある。

[藤井宏志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オラン」の意味・わかりやすい解説

オラン
Oran

アラビア語ではワフラーン Ouahrān。アルジェリア北西部,オラン県の県都で港湾都市。同国第2の大都市。首都アルジェ西南西約 380kmに位置する。地中海に面して温暖だが,雨量は少く年 400mm程度。 10世紀初頭,アンダルシアの商人が,内陸部との貿易の拠点として建設。 1437年には内陸のトレムセン王国の,1509年にはスペインの,1708年にはトルコの,1831年にはフランスの領土となり,アルジェリア西部の行政と経済の中心として発展した。現在市街は,頂上にトルコの城塞跡サンタクルスをいただくスペイン時代の町ラブランカ,海岸付近のラマリーヌ,およびラスエルアイン (谷) 右岸の新市街地に分けられるが,名所旧跡が多い。港は 19世紀後半以降大幅に拡張され,オラン平野の特産ワインをはじめ,穀物,野菜,果物などの積出港。国際空港もある。ハシルメルから 650kmのパイプラインで天然ガスを引いた火力発電所があり,製鋼所,化学肥料工業,ガラス工業,食品加工工業など各種の工業が発展している。 1965年オラン大学が設立され,市立美術館やトレムセン美術館をはじめ文化施設も多い。人口 62万 8558 (1987推計) 。

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百科事典マイペディア 「オラン」の意味・わかりやすい解説

オラン

アルジェリア北西部の港湾都市。アラビア語ではワフラーン。同名県の県都。ブドウ酒,穀類などの輸出港。商工業の中心。海軍基地,大学がある。10世紀に創設。15世紀に貿易で栄え,のちスペイン,トルコ,フランス(1831年以来)の支配を受けた。1790年の地震で破壊され,その後建設された近代的なフランス風市街とカスバや古いモスクなどが対照的。80万3329人(2008)。
→関連項目ライ

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世界大百科事典(旧版)内のオランの言及

【カンラン(寒蘭)】より

…少し日陰の方が葉やけせず,美しい葉も観賞できる。 近縁で多花性のものに,ホウサイラン(報(豊)才蘭)C.sinense (Andr.) Willd.やスルガラン(駿河蘭,別名オラン(雄蘭))C.ensifolium (L.) Sw.があり,どちらもカンランよりも,より温暖な九州西部やそれより南に分布する。また,カンランとシュンランの自然雑種と推定されるハルカンランCnishiuchiana Makinoが高知県から知られている。…

【ラン(蘭)】より

… こうした品種改良は,当初イギリスだけで行われていたが,その後,ヨーロッパ各国にひろがった。現在,品種改良が盛んに行われている国として,アメリカ,イギリス,ドイツ,オランダ,タイ,シンガポール,フランス,オーストラリア,日本などがある。
[日本における洋ラン]
 明治以前,長崎のグラバー家の温室に,シンビジウム・トラシアヌムCymbidium tracyanumがあったといわれるが,はっきりしたことはわからない。…

※「オラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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