レゴン(その他表記)Legong

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レゴン」の意味・わかりやすい解説

レゴン
Legong

インドネシア,バリ島の舞踊。「女性の舞踊」の意味で,代表的な観賞舞踊。呪術舞踊であるサンヤン・デダリから発達したもので,19世紀に入ってから宮廷で洗練され,すべて女性によって演じられるようになった。一般に初潮を迎える前の少女に限られる。2人,あるいは3人の踊り手が,前半では同調した動きを見せ,後半に物語を演じる。肩,腕,腰を水平かつ直線的に動かすのが特徴。現在は物語の構成や振付けがそれぞれ異なる 10種以上のレゴンがあり,代表的なもので以下の3種がある。 (1) レゴン・ラッセム Legong Lasem ラッセム王と王妃ランケサリを主題とした舞踊劇と,王宮の侍女チョンドンの一人舞踊。ラッセム王が森で迷った美しいランケサリ姫を城に連れ帰り,姫に求愛する。王が出陣の際つまずき,また死を予告する凶兆の鳥ガルーダが現れたことから,姫が出陣を断念させるという物語。8~12歳ぐらいの子供が踊るのでレゴン・クチル (子供のレゴン) ともいう。 (2) レゴン・ジョボグ Legong Jobog ラーマーヤナ物語中の,猿の王スバリとスグリワの兄弟の挿話題材とする。兄の妻が怪物に誘拐され,仲のよい兄弟が怪物退治に出かけた。弟は誤って兄と怪物を洞窟の中に生き埋めにしてしまう。弟に国と妻を横取りされると疑った兄が弟に戦いを挑み,ガムランの演奏とともに壮絶な踊りが繰広げられる。これは熟達した女性が演じる。 (3) レゴン・スマラダナ Legong Sumaradana ヒンドゥー教シバ神の伝説を題材とする。シバがヒマラヤ山で瞑想しているとき,魔王ニラルドゥラカが世界を破壊しはじめた。神々はシバの息子である愛の神スマラを魔王退治のため山に遣わすが,スマラはシバの瞑想を覚ませたために焼かれて灰になってしまう。事情を知ったシバは灰を世界中にまく。前半の優美な舞いから葛藤,戦いがガムラン演奏で演出される。

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改訂新版 世界大百科事典 「レゴン」の意味・わかりやすい解説

レゴン
legong[ジヤワ]

バリの宮廷において,18~19世紀ころ創作された3人の女童による踊り。神がかりによる即興的な踊りと,古典舞踊などを母体とした踊りである。神にささげる踊りとしての性格をももっていたため,初潮前の女童のみに踊ることが許されていた。3人のうち2人は優型の,1人は荒型の特徴をもっており,この3人がさまざまな人物に変身して物語が展開される。この物語性は,きわめて抽象的なもので,3人は衣装化粧を変えることはない。かつてはプレゴガンという独特のガムランによって伴奏されていたが,現在は最も普及しているガムランであるガムラン・ゴング,およびガムラン・クビヤルによって伴奏されている。
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