日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヴの総て」の意味・わかりやすい解説
イヴの総て
いぶのすべて
All About Eve
アメリカ映画。1950年作品。ジョゼフ・L・マンキウィッツ監督。マンキウィッツの巧妙な話術がさえわたる一篇。スターダム(スターの座)に上った若き舞台女優イヴ(アン・バクスターAnne Baxter、1923―1985)の狡猾(こうかつ)な素顔が、複数の人物の回想によって徐々に暴かれていく。演劇世界の舞台裏をのぞかせながら、成功物語を暴露的にひねってみせた皮肉な視点が本作の持ち味。また、同期のオスカーを争ったビリー・ワイルダー監督・脚本の『サンセット大通り』(1950)とともに、ハリウッド自らが「スターダム」の意味を問い直した作品ともみなされた。仕掛けの妙をつくした物語展開もさることながら、大女優マーゴー(ベティ・デービス)や大御所的批評家デ・ウィット(ジョージ・サンダースGeorge Sanders(1906―1972))らの口から吐き出される辛辣(しんらつ)な警句、毒舌の痛快なユーモアも忘れがたい。マンキウィッツは前年の『三人の妻への手紙』に続き、アカデミー監督賞・脚本賞の2部門で連続受賞の栄誉に輝いた。
[宮本高晴]