ウイルス性肝炎(読み)ウイルスセイカンエン(その他表記)Viral hepatitis

デジタル大辞泉 「ウイルス性肝炎」の意味・読み・例文・類語

ウイルスせい‐かんえん【ウイルス性肝炎】

ウイルスによって起こる肝炎。軽い発熱・だるさ・食欲不振などに始まって黄疸おうだんも現れるが、1か月くらいで治まる。A型B型C型D型E型が確認されている。
[補説]主に食べ物や水を介して経口感染する流行性肝炎(A型・E型)と、主に血液体液を介して感染する血清肝炎(B型・C型・D型)に大別される。

ウイルス性肝炎の種類と特徴
 A型肝炎B型肝炎C型肝炎D型肝炎E型肝炎
感染経路経口糞便血液・体液血液・体液血液・体液経口(糞便)
潜伏期2~6週間1~6か月1~3か月1~6か月3~9週間
流行性ありなしなしなしあり
慢性化しないすることがあるすることがあるすることがあるしない
肝硬変・肝細胞癌への移行しないすることがある可能性が高いすることがあるしない
劇症化まれすることがあるまれしやすい妊婦に多い

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精選版 日本国語大辞典 「ウイルス性肝炎」の意味・読み・例文・類語

ウイルスせい‐かんえん【ウイルス性肝炎】

  1. 〘 名詞 〙 ウイルスの感染によって起こる肝臓炎症。発熱・倦怠・食欲不振などに始まって黄疸も現われる。A型・B型・C型などがある。

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六訂版 家庭医学大全科 「ウイルス性肝炎」の解説

ウイルス性肝炎
ウイルスせいかんえん
Viral hepatitis
(子どもの病気)

どんな病気か

 肝臓に各種の肝炎ウイルスが感染し、肝機能障害を起こす病気です。

原因は何か

 A型、B型、C型などの肝炎ウイルス、EBウイルスサイトメガロウイルスヘルペスウイルスなどの感染が原因です。

 感染経路はさまざまです。A型肝炎ウイルスによる肝炎は、海産物(生牡蠣(かき)など)を食べたあとに多く発症します。

 B型肝炎ウイルスは母子感染、とくに出産時の母体血との接触産道感染(さんどうかんせん))が原因になります。新生児・乳幼児の一部はキャリア化し、のちに肝病変へ進行することがあります。

 C型肝炎ウイルスは、以前は輸血による感染が多くを占めましたが、最近は、母子感染によるものの割合が多くなっています。

 EBウイルスは、唾液(だえき)を介して感染します。サイトメガロウイルスは、妊婦の初感染に伴う先天性感染と、分娩時の産道感染や輸血後感染などがあります。

症状の現れ方

 発熱、黄疸(おうだん)()疲労感(疲れやすい)、食欲不振などの症状が続く場合もありますが、一般的に小児では無症状が多くなります。

 急性B型肝炎は、皮疹(ひしん)発疹(ほっしん))を伴う場合もあります(ジアノッティ病)。EBウイルス感染(伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう))でも、皮疹(発疹)が現れたり首や頭部などのリンパ節がはれることがあります。先天性サイトメガロウイルス感染症では、小頭症(しょうとうしょう)脳室(のうしつ)周囲の石灰化、網膜炎(もうまくえん)などが起こることがあります。

 出生後の感染では、血液検査で軽度の肝機能障害を認めますが、無症状のことがほとんどです。

検査と診断

 発熱、易疲労感、食欲不振などの症状が続き、黄疸や肝腫大がみられる場合は、血液検査が必要です。ウイルス性肝炎では、ALT(GOT)やASTGPT)などの肝細胞由来の酵素が上昇します。

 家族歴、海外渡航歴や輸血の有無などを確認し、疑わしいウイルスの免疫グロブリンM(IgM)クラスの抗体価を確認します。これらのウイルスのDNAやRNAを確認したり、その量を測定し、病勢を評価する場合もあります。

治療の方法

 ウイルス性肝炎は、小児では無症状で経過することが多く、自然に治っていることもしばしばあります。肝細胞由来酵素が増加している場合は、グリチロンなどの肝細胞庇護薬(ひごやく)などが処方されます。症状が強い場合は、肝臓の炎症を抑える目的でステロイド薬を用いることもあります。

 B型やC型肝炎では、インターフェロンによる治療も行われます。成人に比べて、発熱などの副作用の出現率は低いと考えられています。

病気に気づいたらどうする

 発熱、易疲労感、食欲不振などの症状が続く場合は、小児科医に相談してください。必要に応じて血液検査を行います。また、肝機能障害が確認された場合は、劇症肝炎(げきしょうかんえん)など急激に症状が進行する場合もあるので、定期的に受診することが必要です。

大塚 宜一

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

栄養・生化学辞典 「ウイルス性肝炎」の解説

ウイルス性肝炎

 ウイルスによって起こる肝炎で,現在A,B,C,D,Eに区別されている.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウイルス性肝炎の言及

【肝炎】より

…肝臓の炎症性疾患。肝炎と名がつく肝臓の疾患には,ウイルス性肝炎(急性肝炎),劇症肝炎,慢性肝炎,ルポイド肝炎,アルコール性肝炎や薬物性肝炎などがある。肝炎は,(1)肝細胞の変性,壊死(肝細胞の破壊),(2)肝細胞の機能障害,(3)間葉系反応(細胞浸潤や繊維増生),(4)胆汁鬱滞(うつたい)(胆汁の排出障害,黄疸)などの組織変化の組合せで起こる。…

※「ウイルス性肝炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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