E型肝炎(読み)イーガタカンエン

デジタル大辞泉 「E型肝炎」の意味・読み・例文・類語

イーがた‐かんえん【E型肝炎】

E型肝炎ウイルスHEV)の感染によって引き起こされる急性ウイルス性肝炎。主として経口感染し、一過性で慢性化はしないが、まれに劇症化する。A型肝炎と同様に、感染者の糞便で汚染された水や食べ物を介して感染し、主に開発途上国で流行するが、日本や欧米などでもブタイノシシシカなどの生肉を介して感染することがある。A型肝炎とともに感染症法の4類感染症に指定されている。

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共同通信ニュース用語解説 「E型肝炎」の解説

E型肝炎

E型肝炎ウイルスを原因とする感染症。発熱や体のだるさ、黄疸おうだんなどを主な症状とする急性肝炎を引き起こす。一部は劇症化することがあり、妊娠中の女性はリスクが高いとされる。特別な治療法はなく、安静にして対症療法を行う。肝硬変肝がんにつながる慢性化は起こらないとされていた。感染の原因はウイルスに汚染された飲食物で、生レバーや加熱が不十分な豚肉などが疑われている。国内の感染者は昨年350人を超え、過去最多となった。

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内科学 第10版 「E型肝炎」の解説

E型肝炎(急性ウイルス性肝炎)

(2)E型肝炎
概念
 約7400塩基の単鎖RNAゲノムとしてもつ直径27~34 nmの無エンベロープ性で球状のE型肝炎ウイルス(科名Hepeviridae;属名Hepevirus;種名hepatitis E virus:HEV)によって惹起される肝炎がE型肝炎である.既知肝炎ウイルス中では唯一の人畜共通感染症である.
病態
 本ウイルスは,宿主の肝臓から糞便中に排出された後,食物・飲料水・手指などに混入ないし付着して他人の口中に入るという糞口感染様式(A型肝炎と同様)を取るため,E型肝炎はもっぱら衛生環境未整備の発展途上国の病気であると見なされてきた.特に熱帯・亜熱帯地方において,雨期の洪水により河川が氾濫を起こした後にその流域で集団発生することが頻発したので,本病はかつて「water-borne hepatitis」とよばれたこともある(感染経路については【⇨9-2-1)】). ヒトから分離されるHEVの遺伝子型は大別して4種あり,日本に土着しているのはHEV-3とHEV-4であるが,後者の方が明らかに病原性が高い.すなわち,急性肝炎重症型や劇症肝炎にはHEV-4が多く,不顕性感染にはHEV-3が多い.ヒト以外では,ブタ,イノシシ,シカ,マングース,ウサギ,ラットが感染宿主として知られている.
臨床症状
 男女比約4:1,平均年齢約50歳.典型的な場合には,発熱,倦怠感,黄疸を訴えて来院する.臨床症状や一般検査値からはA型肝炎と鑑別できない.劇症肝炎もある(インドなどでは妊婦に多いとされるが,わが国ではほとんどは男性で,高齢でかつHEV-4である).
診断
 急性期血清中にHEV RNAを証明することが最も確実な診断法である.抗体のみで確定診断するには,2ポイントで抗体力価の変動(すなわち「IgMは下がり,IgGは上がる」)をみるのが望ましいが,それには時間を要するので,現在の日本では簡便法としてIgA-HEV抗体(2011年に保険収載された)を初診時に測定することが一般に行われている.
治療・予防
 重症例にはインターフェロンステロイドが使用されることもあるが,本症に対する特異的な治療法は未確立である.予防策としてのワクチンは,唯一2012年に中国で製造承認されたものがあるのみである.[三代俊治]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「E型肝炎」の意味・わかりやすい解説

E型肝炎
いーがたかんえん
hepatitis E

E型肝炎ウイルス(HEV:hepatitis E virus)に感染して発症する急性肝炎。A型肝炎に類似する肝炎で、A型肝炎ウイルス(HAV:hepatitis A virus)と同様に、糞便(ふんべん)や汚染された食物、飲料水などから経口感染する。2~10週間程度あるいはそれ以上の潜伏期間(平均6週間)を経て肝炎として発症し、流行性を示すことが多い。日本では50歳前後の中高年男性の発症が多く、高齢になるにつれて重症化する傾向がある。東南アジアや南アジア、中央アジア、中近東、中南米、アフリカなどの開発途上国に多く流行がみられる。日本ではほとんどがこれら地域への旅行者による輸入感染症とみられてきたが、近年になって野生のシカやイノシシの生肉を食べて感染した事例や、豚の生レバーからHEV遺伝子が検出されたという報告がある。症状としては黄疸(おうだん)のほか、発熱、倦怠(けんたい)感、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、腹痛、食欲不振、肝腫大(かんしゅだい)などが多くみられる。一般に4~8週で治癒し、慢性化することはない。ただし妊娠後期(第3期以降)の妊婦が罹患(りかん)すると重症化しやすく、劇症肝炎や肝不全を引き起こして死に至ることもある。感染の診断はE型肝炎ウイルス抗体の検出によるが、核酸増幅検査により血中E型肝炎ウイルスRNA(リボ核酸)を検出する方法が確実である。ほとんどは安静にすることにより治癒するが、急性期には対症療法しかない。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「E型肝炎」の意味・わかりやすい解説

E型肝炎
イーがたかんえん
hepatitis E

飲み水などを介する経口感染型の肝炎。亜熱帯から熱帯地域にかけての風土病で,衛生状態の悪い発展途上国で流行している。経口感染する肝炎としてはA型肝炎ウイルスを原因とするものがあるが,これとは異なるE型肝炎ウイルスが原因である。 1990年,アメリカ疾病管理センター CDCなどが原因ウイルスを特定することに成功し,その後の研究で球状粒子であることがわかった。発症後約1ヵ月で治癒するが,死亡率が1~2%とA型肝炎に比べ高い。特に妊婦では 20%にも及ぶとされており,ワクチンの開発が急務となっている。

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