E型肝炎(読み)いーがたかんえん(英語表記)hepatitis E

共同通信ニュース用語解説 「E型肝炎」の解説

E型肝炎

E型肝炎ウイルス原因とする感染症発熱や体のだるさ、黄疸おうだんなどを主な症状とする急性肝炎を引き起こす。一部は劇症化することがあり、妊娠中の女性はリスクが高いとされる。特別な治療法はなく、安静にして対症療法を行う。肝硬変肝がんにつながる慢性化は起こらないとされていた。感染の原因はウイルスに汚染された飲食物で、生レバーや加熱が不十分な豚肉などが疑われている。国内の感染者は昨年350人を超え、過去最多となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「E型肝炎」の意味・わかりやすい解説

E型肝炎
いーがたかんえん
hepatitis E

E型肝炎ウイルスHEV:hepatitis E virus)に感染して発症する急性肝炎A型肝炎に類似する肝炎で、A型肝炎ウイルスHAV:hepatitis A virus)と同様に、糞便(ふんべん)や汚染された食物、飲料水などから経口感染する。2~10週間程度あるいはそれ以上の潜伏期間(平均6週間)を経て肝炎として発症し、流行性を示すことが多い。日本では50歳前後の中高年男性の発症が多く、高齢になるにつれて重症化する傾向がある。東南アジアや南アジア、中央アジア、中近東中南米、アフリカなどの開発途上国に多く流行がみられる。日本ではほとんどがこれら地域への旅行者による輸入感染症とみられてきたが、近年になって野生シカイノシシの生肉を食べて感染した事例や、豚の生レバーからHEV遺伝子が検出されたという報告がある。症状としては黄疸(おうだん)のほか、発熱、倦怠(けんたい)感、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、腹痛、食欲不振、肝腫大(かんしゅだい)などが多くみられる。一般に4~8週で治癒し、慢性化することはない。ただし妊娠後期(第3期以降)の妊婦が罹患(りかん)すると重症化しやすく、劇症肝炎や肝不全を引き起こして死に至ることもある。感染の診断はE型肝炎ウイルス抗体の検出によるが、核酸増幅検査により血中E型肝炎ウイルスRNA(リボ核酸)を検出する方法が確実である。ほとんどは安静にすることにより治癒するが、急性期には対症療法しかない。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「E型肝炎」の意味・わかりやすい解説

E型肝炎
イーがたかんえん
hepatitis E

飲み水などを介する経口感染型の肝炎。亜熱帯から熱帯地域にかけての風土病で,衛生状態の悪い発展途上国で流行している。経口感染する肝炎としてはA型肝炎ウイルスを原因とするものがあるが,これとは異なるE型肝炎ウイルスが原因である。 1990年,アメリカ疾病管理センター CDCなどが原因ウイルスを特定することに成功し,その後の研究で球状粒子であることがわかった。発症後約1ヵ月で治癒するが,死亡率が1~2%とA型肝炎に比べ高い。特に妊婦では 20%にも及ぶとされており,ワクチンの開発が急務となっている。

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