ウォディントン(読み)うぉでぃんとん(その他表記)Conrad Hal Waddington

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォディントン」の意味・わかりやすい解説

ウォディントン
うぉでぃんとん
Conrad Hal Waddington
(1905―1975)

イギリスの動物学者、著述家ケンブリッジ大学のクリフトン・カレッジで学ぶ。1947年エジンバラ大学の動物遺伝学主任教授となる。鳥類の発生の研究を進めるなかから、シュペーマン両生類で発見した形成体誘導現象が、鳥類にもみられることを確かめた。発生学遺伝学の融合に努め、両生類や鳥類の胚(はい)発生の研究やショウジョウバエの突然変異体を用いての環境による集団の遺伝構成の変化の研究などを行った。また多くの著作を通じて、生物学の理論や科学一般、あるいは社会や人間の倫理について興味深い問題を提起した。主著に『The principles of embryology』(『発生学の原理』1956)、『エチカルアニマル』(1960)、『生命の本質』(1961)がある。

[石館三枝子]

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改訂新版 世界大百科事典 「ウォディントン」の意味・わかりやすい解説

ウォディントン
Conrad Hal Waddington
生没年:1905-75

イギリスの生物学者。ケンブリッジ大学を卒業。同大ストレンジウェーズ研究所動物学・発生学講師を経て,エジンバラ大学動物遺伝学研究所教授,所長歴任。ケンブリッジ大学時代には鳥類や両生類の形成体organizerに関する実験発生学的研究を行い,さらにJ.ニーダムやブラッシェJ.Brachetとともに無機物でも誘導能があることを見いだした。エジンバラ大学ではショウジョウバエを用いて発生遺伝学的研究に取り組み,発生過程における適応的進化や遺伝の問題を考察した。哲学者A.N.ホワイトヘッドの影響を受け,理論生物学や科学論に関する著作も多い。主要著書には《発生と分化の原理》(1956),《エシカル・アニマル》(1960),《生命の本質》(1961)などがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウォディントンの言及

【カタストロフィー】より

…1960年代にフランスのトムRené Thomは,微分位相幾何学の一分野である特異点の理論を深く研究し,この理論が数学以外の科学の分野,とくに生物の形態形成に応用できるのではないかとのアイデアを得た。トムはイギリスの生物学者ウォディントンC.H.Waddingtonらと協力してこの理論を発展させ,《構造安定性と形態形成stabilité structurelle et morphogénèse》(1972)を著して,カタストロフィー理論を発表した。70年代よりイギリスのジーマンE.C.Zeemanは,トムのアイデアをいろいろな現象に応用し,トムと並びカタストロフィー理論の開拓者となっている。…

【カタストロフィー】より

…1960年代にフランスのトムRené Thomは,微分位相幾何学の一分野である特異点の理論を深く研究し,この理論が数学以外の科学の分野,とくに生物の形態形成に応用できるのではないかとのアイデアを得た。トムはイギリスの生物学者ウォディントンC.H.Waddingtonらと協力してこの理論を発展させ,《構造安定性と形態形成stabilité structurelle et morphogénèse》(1972)を著して,カタストロフィー理論を発表した。70年代よりイギリスのジーマンE.C.Zeemanは,トムのアイデアをいろいろな現象に応用し,トムと並びカタストロフィー理論の開拓者となっている。…

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