改訂新版 世界大百科事典 「ウチスズメ」の意味・わかりやすい解説
ウチスズメ (家天蛾)
Smerinthus planus
鱗翅目スズメガ科の昆虫。開張8cm内外。後翅は紅色を帯び,大きな黒紋の中に青色環,さらにその外側は黒色環があって,眼状紋となっている。この眼状紋は,食虫性の鳥や獣類が接近したときに露出して,翅を緩やかに振動させることによって害敵を威嚇し,生命の安全を保つのに役だっているものと考えられている。幼虫は他のスズメガと同じように,第8腹節の背上に1本の尾角をもっている。体は緑色,黄白色の斜線が側方に8本ある。北海道から九州まで全国的に分布し,温暖地では年に2回発生し,さなぎの状態で土中に潜って越冬する。幼虫はポプラ,ドロノキ,ヤマナラシなど,各種のヤナギ科の葉を食べる。成虫は夜行性で,よく灯火に飛来する。本種によく似て,やや小型なヒメウチスズメS.caecusが北海道に分布し,さらに小型なコウチスズメS.tokyonisが本州,四国,九州に分布。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報