日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤナギ科」の意味・わかりやすい解説
ヤナギ科
やなぎか
[学] Salicaceae
双子葉植物、離弁花類。高木または低木。雌雄異株。多くは早春開花するが、夏季に開花するものもある。花は尾状花序をなし、各花は包腋(ほうえき)につき、花被(かひ)はなく、指状、環状、杯(さかずき)状などの腺体(せんたい)がある。雄花の雄しべは1本ないし十数本。花糸は離生するが、癒合するものもある。雌花の雌しべは1本、花柱は2~4本で、2裂するものもある。子房は1室、2~4個の側膜胎座に1個ないし多数の倒生卵子が生じ、無胚乳(はいにゅう)の種子になる。種子の基部は胎座より生じた長白毛(柳絮(りゅうじょ)または種髪(しゅはつ)と称する)に囲まれ、風で飛ぶ。ヤナギ亜科とヤマナラシ亜科の2亜科に分かれ、5属約300種があり、おもに北半球の暖帯から温帯、少数が南半球にも分布する。
ヤナギ亜科では頂芽を欠き仮軸分枝型である。冬芽の鱗片(りんぺん)は2片が合生して1枚になり帽子状を呈するか(ヤナギ属Salix)、腹側に重なる(ヤナギ属の一部、オオバヤナギ属Toisusu、ケショウヤナギ属Chosenia)。ヤナギ属は雄しべは1~12本で多くは2本、花は腺体が指状であるが環状のものもあり、虫媒で、柱頭は宿存する。オオバヤナギ属は雄しべは5~10本、雌しべの柱頭は花柱の上部とともに落ち、虫媒で、雄花で1~3個、雌花では2個の指状腺体がある。ケショウヤナギ属は通常は腺体を欠き、風媒で雄しべ5本である。さらにオオバヤナギとケショウヤナギとの属間雑種のカミコウチヤナギ属がある。
ヤマナラシ亜科はヤマナラシ属Populus約40種(ポプラなど)があり、尾状花序は下垂し花は風媒で杯状の腺体がある。冬芽の鱗片は多数で、頂芽では瓦(かわら)状に、腋芽では背腹2列互生に重なる。頂芽により主軸が形成される単軸分枝型であるが、コトカケヤナギP. euphratica Oliv.その他10余種では頂芽を欠き、腋芽により主軸が形成される仮軸分枝型であることなどから別のコトカケヤナギ属Balsamifluaとして扱う見解もある。
[菅谷貞男 2020年7月21日]
APG分類でもヤナギ科であるが、以前のイイギリ科の大部分とカミニンギョウ科がヤナギ科に統合されている。また、オオバヤナギ属とケショウヤナギ属はヤナギ属に統合された。ヤナギ科は世界に約55属1250種、日本に5属32種があるとされる。
[編集部 2020年7月21日]