日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラッパ」の意味・わかりやすい解説
カラッパ
からっぱ
box crab
節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目カラッパ科カラッパ属Calappaのカニ類の総称。古くはマンジュウガニとよばれていたが、オウギガニ科にマンジュウガニ属Atergatisとしてまとめられるカニ類があり、混乱を避けるために属名をそのまま和名とするようになった。世界の温帯、熱帯海域に広く分布し、一般に浅海の砂泥底にすんでいる。甲幅は5~15センチメートルで、背面がドーム形に膨れ、表面が滑らかで光沢がある場合と、円錐(えんすい)形またはやや鱗(うろこ)状の突起で覆われている場合がある。甲の前側縁は単に湾曲しているだけであるが、後側縁は屋根のひさし状に張り出し、その下に歩脚を折り畳むことができる。はさみ脚(あし)は幅広く、甲の前面や口の部分をすっぽり覆ってしまう。はさみ脚は左右ほぼ同大であるが、形は異なり、右側の不動指の付け根に大きな突起がある。この突起を巻き貝の入口にひっかけ、缶切りの要領で、巻いているのにあわせて切り壊してしまい、内部のヤドカリを食べる。大きなはさみ脚が呼吸水の浄化に役だつといわれ、また、甲のひさし状に張り出した下側のくぼみに呼吸水を蓄えておくことができるという。
日本産のカラッパ類は11種であるが、濃紫色の虎斑(とらふ)模様をもつトラフカラッパC. lophosや、眼窩(がんか)が黒く縁どられているメガネカラッパC. philargiusは個体数が多く、網によくかかる。また、一面に赤紫色のいぼ状突起があるヤマトカラッパC. japonicaや、甲面が滑らかで張り出しが丸いマルソデカラッパC. calappaが浅海に少なくない。サンゴ礁の砂地にはじみな色彩のソデカラッパC. hepaticaが多い。乾燥させて置物などにされることはあるが、食用にはならない。
[武田正倫]