日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウバイド」の意味・わかりやすい解説
ウバイド
うばいど
al-Ubaid
イラク南部、ユーフラテス川の西方砂漠にある、ウバイド期の標準遺跡。紀元前5000年紀後半から前3500年ごろに位置するものとされる。ウバイド期はエリドゥ期やハジ・ムハンマド期のあとに成立した文化期で、南メソポタミアではもっとも古く、それ以前の文化期を原ウバイド期とする学者もある。ウバイドからは土器が大量に出土したが、層位的にはっきりしていない。むしろ、南東にあるエリドゥにおいて、ウバイド期の層が8層から6層にみられる。ウバイド期は前・後の2期に分けられ、自給的な村落から交易を含む神殿中心の村落への移行が認められる。神殿はエリドゥ、ウルク、ウルにみられ、ウルでは処女層の上に初期のものがみられる。北メソポタミアでは、神殿中心の村落形態はよりいっそう明確となり、テペ・ガウラではウバイド前期に属する神殿が建てられている。
[糸賀昌昭]