エリドゥ(読み)えりどぅ(英語表記)Eridu

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリドゥ」の意味・わかりやすい解説

エリドゥ
えりどぅ
Eridu

古代のシュメールの都市国家の一つ。エリドゥは、イギリス領事のテーラーJohn George Taylorによって、古都ウルの南約23キロメートルにあるイラク南部のユーフラテス川に近いいまのテルアブ・シャフライン(イラク)と同定された(1855)。1918年のトムソンReginald Campbell Thompson(1876―1941)に次いで、1947~1949年にイラク古物局の手で本格的な発掘調査が行われた。シュメール人自身の歴史的記憶を編纂(へんさん)した最古の文書「シュメール王名表」には、冒頭に「王権が天から降(くだ)ったとき、その王権はエリドゥにあった」と記されている。発掘調査の結果、シュメール最古の遺構遺物を伴った都市の一つであったことが確認された。すなわち、同地の最初の定住者のエリドゥ期文化(前5300ころ~)から次のウバイド期文化(前4500ころ~前3500ころ)を経て神殿を中心に町から都市への発展の推移が明らかにされた。エリドゥは、天神アン(ウルクの主神)、シュメール・アッカド時代の最高神である嵐神エンリル(ニップールの主神)と並んで、シュメールの三大神をなす水と大地の神であるエンキの聖都であった。

[高橋正男]

 エリドゥの遺跡は、2016年、「南イラクのアフワール:生物の避難所と古代メソポタミア都市景観の残影」の一つとして、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の複合遺産世界複合遺産)に登録された。

[編集部 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリドゥ」の意味・わかりやすい解説

エリドゥ
Eridu

イラク南東部にあったシュメールの古代都市。ウル南西に位置し,歴代の王をシュメール語で列記した記録であるシュメール王名表における最古の都市としてあがめられた。水の神エンキ(エア)を守護神としてまつる。今日のナーシリーヤ南西約 45kmにあるアブ・シャーライン遺跡がエリドゥとされる。1946~49年のイラク考古局による発掘の結果,先史時代の南部バビロニアにおける最重要都市であることが明らかになり,前5千年紀とみられる砂丘での創建から無文字社会のウバイド期にかけての発展の過程が,幾層にも複雑に重なり合った日干し煉瓦の神殿建築とともに浮き彫りになった。前600年頃まで存続したが,その頃には歴史的重要性は失われた。2016年,同じくメソポタミアの古代都市であるウルとウルク,および生物多様性の顕著なチグリス川ユーフラテス川下流の 4ヵ所の湿地帯とともに,「イラク南部のアフワール:生物多様性保護区とメソポタミア都市群の残存する景観」として世界遺産の複合遺産に登録された。

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