日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウプダール」の意味・わかりやすい解説
ウプダール
うぷだーる
Kristofer Uppdal
(1878―1961)
ノルウェーの詩人、小説家。北トロンデラグの農家に生まれたが、家が早く破産し、母も死んだので、少年時代から牧童、農家の手伝い、鉱夫などをし、やや長じては自由労働者として水力発電所の工事現場などで働き、その間にナムダルやアスコフの国民高等学校で学んだ。ゲーテ、ハイネ、ニーチェ、ゴーリキー、ストリンドベリ、ハムスンなどを愛読し、また社会主義やアナキズムの理論にも親しみ、しだいに労働運動に参加、その大立て物となった。文学的には詩集『若き悲しみと歌』(1905)がデビュー作で、その後もいくつかの詩集や評論集がある。だが彼の名を不朽にしたのは、1910年から24年にかけて書いた連作の自伝的長編『影の国をぬけての舞踏』10巻で、当時の社会状況と作者の恋愛や思想的悩みの優れた報告となっている。晩年は懐疑と絶望の色を濃くし、故郷に引きこもって寂しく生涯を閉じた。
[山室 静]