日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラジーモフ」の意味・わかりやすい解説
ウラジーモフ
うらじーもふ
Георгий Николаевич Владимов/Georgiy Nikolaevich Vladimov
(1931―2003)
ロシアの小説家。ウクライナ北東部、ハリコフ(現、ハルキウ)生まれ。トラック運転手などをしながら、レニングラード大学の法科を卒業。『新世界(ノーブイ・ミール)』編集部に勤務したのち、1961年初めての作品『大鉱脈』(単行本刊行は1962年)を発表、「雪どけ」後の世代を代表する若手作家として注目を浴びる。『大鉱脈』はダンプカー運転手を主人公に、旧ソ連民衆の下積みの生活と精神的荒廃の状況を鋭くえぐりだしたもの。1969年には、長編『三分間の沈黙』を発表し、話題をよぶが、1970年代以降、文学の自由をめぐる公開状や、ラーゲリ(強制収容所)の監視犬を主人公にした小説『忠犬ルスラン』の地下出版(サミズダート)流布(1975年旧西ドイツで出版)により、当局と対立を深め、1977年にはボイノービチ、コーペレフЛев З. Копелев/Lev Z. Kopelev(1912―1997)、チュコフスカヤ等の除名に抗議してソビエト作家同盟を脱退、人権擁護の「アムネスティ・インターナショナル」モスクワ支部長を務める。1983年、ケルン大学で1年間ロシア文学の講義を担当するが、その間に市民権を剥奪(はくだつ)され、西側でしばらく活動を続ける。1989年『忠犬ルスラン』が国内解禁となり、1995年には『将軍と彼の軍隊』により、ソ連邦崩壊後ロシアでもっとも権威のある文学賞「ロシア・ブッカー賞」の第4回受賞者となった。2000年には、4巻からなる作品選集がモスクワで出版され、英、独、仏、ポーランドその他で作品が翻訳された。
[安井侑子 2016年1月19日]