人間の天賦かつ不可譲の権利としての自然権とは区別される、実定法上の市民の権利。1789年のフランスの「人間と市民の権利の宣言」(いわゆる「人権宣言」)は、人間の自然権として、自由、権利の平等(1条)、所有、安全、圧制に対する抵抗(2条)を掲げた。また市民の権利としては、「すべての市民が、その身自ら、またはその代表者を通じて、法律の作成に参画する権利」、すべての市民が、「徳性および才能以外の差別を除いて平等にあらゆる公の位階、地位および職務に就任」しうる権利(6条)、租税の決定に参画する権利(14条)、行政上の公職員に報告を求める権利(15条)を掲げている。市民権という用語は、自然権との区別なしに国民の享受するいっさいの権利をさす場合も、参政権と区別して他の諸自由をさす場合も、労働基本権、生存権などの社会権と区別される場合も、アメリカのように公民権をさす場合もある。
[古賀英三郎]
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