日本大百科全書(ニッポニカ) 「チュコフスカヤ」の意味・わかりやすい解説
チュコフスカヤ
ちゅこふすかや
Лидия Корнеевна Чуковская/Lidiya Korneevna Chukovskaya
(1907―1996)
ロシアの女性小説家。詩人・批評家K・I・チュコフスキーの娘としてペテルブルグに生まれる。1937年のスターリン大粛清を描いた『ソフィア・ペトロブナ』(邦訳『廃屋』)は1939年に書かれたが、国内では刊行されず、25年後パリで初めて刊行された。これは「書かずにはおれなかった」悲劇的証言であり、罪なく逮捕される「清廉」の人の真実と運命が問われている。『民衆の怒り』(1973)ではA・D・サハロフを擁護した。ほかにも、1940年代末期の文化人抑圧の記録『水中潜行』(1972)、ソルジェニツィンらを擁護した『公開書簡集』(1976)、『アフマートワについての覚書』(1976~80)などがあるが、これらもすべて国外で刊行された。1974年、ソルジェニツィンやサハロフらを擁護したことを理由にソビエト作家同盟から除名されたが、88年に復権した。
[工藤正広]
『内村剛介編、青山太郎訳『現代ロシヤ抵抗文集第1 廃屋』(1970・勁草書房)』