ウンムダバギヤ(英語表記)Umm Dabaghiyah

改訂新版 世界大百科事典 「ウンムダバギヤ」の意味・わかりやすい解説

ウンム・ダバギヤ
Umm Dabaghiyah

北メソポタミアにおける最初期の土器をともなう新石器時代の遺跡。イラク北部,モースル南西約95kmにあるパルティア時代の都市遺跡ハトラの西方26kmに位置する。炭素14法による測定年代で前6000年ころ。1940年代後半から60年代まで,この地域ではハッスナ遺跡最古の農耕村落遺跡として著名であったが,断片的な資料しかなかった最下層Ia期に並行する時期の資料がここで多く発掘された。遺跡は100m×85m,文化層の厚さ約4mで,71-74年に計4回,カークブライドD.Kirkbrideが隊長として発掘した。4層に分けられ,どの層もすべてハッスナ文化以前に位置づけることができるので,プレ・ハッスナ文化,ウンム・ダバギヤ文化,あるいはテル・サラサートの発掘で確認されたことからサラサート文化の各名称が提唱されている。中央広場を囲む北東南の3面に小部屋列からなる倉庫群を配置し,西に居住区をつくっている。住民は穀物の栽培よりも狩猟にその食糧を依存していたようである。動物遺体の統計によると,牛,羊,ヤギ,豚などの家畜は約11%にとどまり,大部分が野生獣であり,なかでもオナジャー(野生ロバの一種)が70%を占めていることは,壁画にオナジャー狩りの場面を描いていることとともに,この遺跡の性格をあらわしている。発掘者は,この遺跡をオナジャーの皮製品の製作と交易の中心地と考えている。壁や床を白く塗ること,壁画や土器の浮彫動物文,打製石器技法はレバント地方,アナトリア高原,ワン湖地域との関連を示し,とくに石器の特徴は,北方,北西方および西方の無土器新石器時代のそれに共通点をもつとされる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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