打製石器(読み)ダセイセッキ

デジタル大辞泉 「打製石器」の意味・読み・例文・類語

だせい‐せっき〔‐セキキ〕【打製石器】

打ち欠いたりいだりして仕上げた石器。日本では無土器時代から縄文時代弥生時代に使用。→磨製石器

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精選版 日本国語大辞典 「打製石器」の意味・読み・例文・類語

だせい‐せっき‥セキキ【打製石器】

  1. 〘 名詞 〙 石を打ち欠いたり剥いだりしてつくった石器の総称。原石器の簡単なものから後期旧石器時代の微細な整形を施したものまである。日本では先縄文文化の石器はすべて打製で、縄文時代に多くつくられ、彌生時代にも見られる。→磨製石器
    1. [初出の実例]「縄文期原人が用ゐた打製石器を」(出典:雪の涯の風葬(1969)〈高井有一〉六)

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改訂新版 世界大百科事典 「打製石器」の意味・わかりやすい解説

打製石器 (だせいせっき)

石器時代に使われた,石を打ち欠いてつくった道具類の総称。また,やや広い意味で用いて,装飾品や他の用途の不明な遺物も含む打製石製品を指すこともある。石材を打ち割ることによって生ずる鋭い縁を,切る,削る,突くといった作業に利用することを目的とし,道具の形を整えるための打ち割り加工も施されている。〈打ち割る〉方法(打製)による石器づくりは,石器時代には最も初源的な姿であると同時に,ごく普遍的である。加工技術からみて,打製は基本的には石と石とをぶつけ合って欠くことにあり,これを硬質ハンマーによる直接打撃の加工と呼び,木,骨角など石より軟らかい材質による加工を,軟質ハンマーの直撃の加工と呼ぶ。打ちつける力を間接的に加える方法もあるが,これに〈押し剝ぐ〉技術(押圧剝離)が加わる。打製石器の加工状況は,これらの欠け面の見かけだけの判断では厳密な区別ができないのが現状である。打製石器類には,打ち割ったとき鋭い縁が得られる硬質できめ細かい石材が選ばれ,ヨーロッパでは一般的にフリントが,日本では安山岩,ケイ岩,ケツ岩,黒曜石などが好んで用いられている。

 旧石器時代の石器類はごく特殊なものを除けば,すべて打製石器である。後期旧石器時代の剝片石器での石刃技法,細石刃技法などはある目的の剝片類をつくりだすために開発された打製の最高の技術といえる(細石器)。日本の旧石器については,多くの石器が打製であるにもかかわらず,打製という語を用いていない。その理由は,先進的な欧米に範を学んだことにもよるが,従来の研究での縄文・弥生時代の石器類と区別するためである。縄文時代の石鏃,石槍,石匙,石錐などは打製の名を冠しなくても,すべてこの種の石器に含められる。ただ打製石斧は同時に存在する磨製石斧と用途の違いからも,その区別は重要である。弥生時代の石器のなかにも,打製の技術は生きている。石鏃,石槍,石剣,石庖丁,石錐,石鍬など同種のものが磨製にあるときは,例えば打製石鏃というように区別して打製名をつける。打製の技術は磨製の石器の製作工程で使われることがある。北九州の弥生時代の太形蛤刃石斧,石庖丁の製造には典型的な姿がみられるが,しかしこの段階の遺物を打製石器とは呼ばない。古墳時代でも玉造りの工程に,打ち欠きの技術が認められる。
石器 →磨製石器
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「打製石器」の意味・わかりやすい解説

打製石器
だせいせっき

石材加工の三つの技術の一つ「打ち割る」方法によって、道具として機能に直接結び付いた刃をつくりだし、また全体の形を整えた石器類をさす。基本的には石ハンマー(硬質ハンマー)を使って直接たたき割る方法(直接打撃法)をとるが、きめ細かな材質の場合には石より軟らかい木、骨角など(軟質ハンマー)を用いた押し剥(は)ぐ方法(押圧剥離(おうあつはくり)法)による仕上がりの優美な加工がある。また、間にパンチ(たがね)を挟んだ間接的な打撃方法も考案される。黒曜石、頁岩(けつがん)、安山岩、硅岩(けいがん)などの割れ口の鋭い岩石が多用される。旧石器時代の石器類の99%以上が打製であり、礫器(れっき)(片刃のものをチョッパー、両刃のものをチョッピングトゥールとよぶ)、握斧(あくふ)、尖頭器(せんとうき)、両面加工石器、ピエスエスキーユ、植刃、舟底形石器、ナイフ形石器、切出し形石器、彫器、錐(きり)、台形石器、細石器などがある。縄文時代には石鏃(せきぞく)、石槍(せきそう)、石銛(いしもり)、打製石斧(せきふ)、石匙(いしさじ)、石錐(せきすい)など、弥生(やよい)時代には石鏃、石槍、石錐、打製石包丁(いしぼうちょう)、石小刀、主として楔(くさび)の役割をしたとみられる不定形石器、打製石鍬(いしぐわ)などの打製石器類がある。

[松沢亜生]


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百科事典マイペディア 「打製石器」の意味・わかりやすい解説

打製石器【だせいせっき】

石材を打ち欠きによって製作した石器磨製石器の対語。旧石器時代から新石器時代に作られた。材料の芯の部分を残すようにする石核石器と,はいだ石片を利用する剥片(はくへん)石器がある。前者は前期旧石器時代,後者は後期旧石器時代から作られ,材質は黒曜石サヌカイトフリントなどがある。
→関連項目ホアビン文化

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「打製石器」の解説

打製石器(だせいせっき)

石を打ちかいて用具としたもの。前期旧石器時代のアブヴィル文化の握斧(あくふ)などは石槌(せきつい)打法により生まれ,アシュール文化期にはさらに円筒槌打法が加わって,アブヴィルのジグザグの粗い石槌打法に対して,刃部に再加工を施している。それに剥片(はくへん)石器を得るための調整石核(せっかく)法が発見され,後期旧石器時代には石刃(せきじん)法が現れる。これに細部加工を施すための押圧剥離(おうあつはくり)が加わった。握斧,ナイフ,ポイント(尖頭器),スクレーパー,ビュラン(刻刀),またのちには打製石斧,石鎌,石鏃(せきぞく),石匙(せきひ)などがあげられる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「打製石器」の解説

打製石器
だせいせっき

打ち欠き・剥離などによって製作された石器。人類が石器を作りだした数百万年前から使用され,当初は石や鹿角による直接打法や両極打法によって作られていたが,後期旧石器時代には間接打法や押圧剥離技法によって剥片(はくへん)石器や石刃(せきじん)石器が作られた。縄文時代には尖頭器(せんとうき)や石鏃(せきぞく)・打製石斧などが使用された。弥生時代でも打製石器として,石鏃・石槍・石小刀・打製石包丁などがある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「打製石器」の解説

打製石器
だせいせっき

石面を打ちかいて作った旧石器時代の石器
研磨 (けんま) して作った磨製石器に対して呼ばれる。人類が地球上に発生して間もない時期から新石器時代に至るまで使用された。大別して自然礫 (れき) の周辺を打ちかいて刃をつけた石核 (せつかく) 石器と,自然礫から打ちかいて取った剝片 (はくへん) を加工して作った剝片石器とがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「打製石器」の意味・わかりやすい解説

打製石器
だせいせっき

打欠く方法のみによってつくり上げた石器。礫器握斧石刃,グレーバー,スクレーパー,尖頭器,石斧,石鏃などがある。旧石器文化は打製石器を特徴とするが,石斧には局部磨製石斧もみられる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「打製石器」の解説

打製石器
だせいせっき

石を打ち欠いてつくった石器
旧石器時代から弥生時代まで用いられた。石斧 (せきふ) のように原材に加工した石器と石鏃 (せきぞく) や石匙 (せきひ) のように破片を利用したものと2種があり,前者を石核石器,後者を剝片 (はくへん) 石器という。

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世界大百科事典(旧版)内の打製石器の言及

【石器】より

…装飾品や玉類には硬い碧玉,硬玉が,ときには磨製石斧に硬い安山岩や斑レイ岩が用いられることもある。 また打製石器には,石材の芯の部分を残すようにしてつくる石核石器と,剝いだ剝片を利用する剝片石器の二つの系列がある。前期旧石器時代の石器類はおもに石核石器であるが,後期旧石器時代には剝片石器が盛んに作られ,特殊な剝片である石刃を効率よく生産する方法,いわゆる石刃技法を編みだす。…

【刃物】より

… 石器・金属器を問わず,刃物は損耗すると刃がつけなおされる。打製石器の場合は新たな打ち欠きによって,磨製石器・金属器の場合は砥石で磨くことによって新しい刃を作り出す。この過程が繰り返され,長さや幅が,柄に着装する,あるいは手に握る限度に達すると,刃をつけなおすことなく使われ,最後に捨てられる。…

※「打製石器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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