エイズの肛門病変(読み)エイズのこうもんびょうへん(その他表記)AIDS-associated anal lesion

六訂版 家庭医学大全科 「エイズの肛門病変」の解説

エイズの肛門病変
エイズのこうもんびょうへん
AIDS-associated anal lesion
(直腸・肛門の病気)

どんな病気か

 エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症です。発症すると生体の感染防御能力を低下させ、自己免疫機構の中枢であるCD4陽性Tリンパ球数(正常は800/μℓ)を減少させて、さまざまな日和見(ひよりみ)感染症を引き起こします。

 HIV感染者の85~90%の人が、約10年でエイズを発症します。感染者の25%が死亡しています。

 診断は、発熱、咽頭痛、発疹などの初感染期症状と、HIV抗原・抗体検査の組み合わせで行います。

 エイズによる肛門病変としては、①日和見感染病変、②腫瘍性病変があります。①にはウイルス性、細菌性(梅毒)、原虫性(アメーバ赤痢)、②にはカポジ肉腫悪性リンパ腫など複数の感染症が混在しています。具体的には痔瘻尖圭コンジローマ、梅毒性肛門周囲潰瘍、悪性リンパ腫、アメーバ症などです。

原因は何か

 ほとんどがHIV感染者との性的交渉が感染原因になっています。

症状の現れ方

 日和見感染症としては、CD4陽性Tリンパ球が500~200/μℓ前後では、口腔内カンジダ症、カポジ肉腫、トキソプラズマ症を発症します。200/μℓ以下でカンジダ食道炎カリニ肺炎、単純ヘルペス腸結核(ちょうけっかく)悪性リンパ腫を発症し、75~50/μℓ以下では非定型抗酸菌症(ひていけいこうさんきんしょう)サイトメガロウイルス感染症が合併しやすくなります。

 エイズでは不明熱、慢性下痢、体重減少が特徴的な症状ですから、下痢による肛門周囲膿瘍要注意です。

治療の方法

 免疫の目安であるCD4陽性細胞数が200~300/μℓになったら、抗HIV療法を開始します。基本的にはヌクレオシド系逆転写酵素(ぎゃくてんしゃこうそ)阻害薬2剤とプロテアーゼ阻害薬1剤を併用し、長期間継続します。最近は多剤併用療法(HAART)によって、感染症の予後はかなり改善され、死亡者は減少し、治るようになってきました。

 肛門病変は手術することもあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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