エリュシオン(その他表記)Ēlusion

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改訂新版 世界大百科事典 「エリュシオン」の意味・わかりやすい解説

エリュシオン
Ēlysion

古代ギリシア人が想像した楽園。ホメロスによれば西方大地の果て,オケアノスの流れの近くにあり,気候温暖,芳香に満ちる。〈至福者の島〉とも呼ばれ,神々に嘉(よみ)せられた英雄が送られた。後には行いの正しい人間が死後に移り住む冥界の一部と考えられた。ベートーベンが第九交響曲に用いたシラーの《歓喜に寄す》にもエリュジウムElysiumとラテン語に由来する形で現れ,フランス大統領官邸エリゼ宮Élyséeもこれにちなむ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリュシオン」の意味・わかりやすい解説

エリュシオン
Elysion

ギリシア神話の楽園。神々に特別祝福された人間たちが死後の生をおくる場所世界の西のはてのオケアノスの流れの岸辺にある野原で,ラダマンチュスが支配し,雪も嵐もなく,常に西風が吹く,人間にとって最も住みよい場所であるという。

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世界大百科事典(旧版)内のエリュシオンの言及

【ハデス】より

… 古代ギリシア人の考えによれば,死者の亡霊はまずヘルメスによって冥界の入口にまで導かれ,ついで生者と死者の国の境の川ステュクスまたはアケロンを渡し守の老人カロンに渡されたあと,三つ頭の猛犬ケルベロスの番するハデスの館で,ミノス,ラダマンテュス,アイアコスの3判官に生前の所業について裁きを受ける。その結果,多くの亡霊はアスフォデロス(不花)の咲きみだれる野にさまようことになるが,神々の恩寵めでたき英雄や正義の人士はエリュシオンの野(古い伝承では,はるか西方の地の果て,のちに冥界の一部と考えられた)に送られて至福の生を営む一方,シシュフォスやタンタロスのごとき極悪人はタルタロスなる奈落へ押しこめられ,そこで永遠の責め苦にあうものと想像された。【水谷 智洋】。…

【楽園】より

…またチベットその他の山中のいわゆる秘境が,〈山中楽園〉のイメージを添えて宣伝されることも少なくない。いっぽうパリの大通りシャンゼリゼは〈エリュシオンの野〉から由来しており,ギリシアの楽園神話にもとづく命名であるし,世界の各都市の歓楽街に〈エデン〉〈シャングリラ〉などのネオンがまたたく光景は,人間の楽園願望が不変であることを裏書きしているだろう。庭園天国ユートピア【川崎 寿彦】。…

※「エリュシオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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