西風(読み)ニシカゼ

デジタル大辞泉 「西風」の意味・読み・例文・類語

にし‐かぜ【西風】

西から吹いてくる風。にし。
[類語]春一番春風しゅんぷう春風はるかぜ花嵐薫風風薫る緑風やませ涼風すずかぜ涼風りょうふう秋風野分き木枯らし空風寒風季節風モンスーン貿易風東風ひがしかぜ東風こち偏西風南風みなみかぜ南風はえ凱風北風朔風雨風波風風浪風雪風雨無風微風そよ風軟風強風突風烈風疾風はやて大風颶風暴風爆風ストーム台風ハリケーンサイクロン神風砂嵐つむじ風旋風竜巻トルネード追い風順風向かい風逆風横風朝風夕風夜風松風まつかぜ松風しょうふう山風山颪谷風川風浜風潮風海風陸風熱風温風冷風

せい‐ふう【西風】

西方から吹いてくる風。にしかぜ。
寂しい秋の風。秋風。

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精選版 日本国語大辞典 「西風」の意味・読み・例文・類語

せい‐ふう【西風】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 西方から吹く風。にしかぜ。
    1. [初出の実例]「依西風吹船」(出典:参天台五台山記(1072‐73)一)
    2. 「客船于此重嗟問。惆悵西風夕照中」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)題詞)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐郎顗伝〕
  3. 特に、西から吹く秋の風。秋風。
    1. [初出の実例]「南呂之初節、西風之中律」(出典:実隆公記‐文明一二年(1480)八月朔日)
    2. [その他の文献]〔李白‐長干行詩〕

にし‐かぜ【西風】

  1. 〘 名詞 〙 西の方角から吹いてくる風。にしげ。にし。
    1. [初出の実例]「能登国石動の嶽より又にしかぜ吹きて船を東へぞ向けたりける」(出典:義経記(室町中か)七)

にし‐ふう【西風】

  1. 〘 名詞 〙 義太夫節語り口の名称。大坂、道頓堀の西側にあった竹本座を開いた竹本義太夫の地味な曲風。東風(ひがしふう)が起こって以後の名称。

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普及版 字通 「西風」の読み・字形・画数・意味

【西風】せいふう

秋風。唐・許渾〔秋思〕詩 樹西風、枕(ちんてん)(たかむしろ)の秋 楚雲湘水、同(おも)ふ 高歌一曲、を掩(おほ)ふ 昨日の少年、今白頭

字通「西」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西風」の意味・わかりやすい解説

西風
にしふう

太夫節で竹本座芸風をいう。豊竹座の東風に対する。竹本座が道頓堀の西寄りに位置していたことに由来する呼称。流祖竹本義太夫の個性や語り口から発し,やがて竹本座全体の芸風となった。基本的な作劇理念,発声,使用する主な旋律型なども統一されている。総体に地味で劇的な写実性にすぐれ,男性的な語り口である。寛延1 (1748) 年,『仮名手本忠臣蔵初演の際に太夫の東西入替り事件が起きて以後,両座の風は混交するようになり,また一つの作品の前半を西風,後半を東風で演奏したり,『忠臣蔵』以前の作品の改曲もなされるようになった。今日まで西風で伝承されるものに,『国性爺合戦 (こくせんやかっせん) 』3段目の「甘輝館」,『鬼一法眼三略巻 (きいちほうげんさんりゃくのまき) 』3段目の「菊畑」,『心中宵庚申 (しんじゅうよいごうしん) 』中の巻の「上田村」などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西風」の意味・わかりやすい解説

西風
にしかぜ

西の方角から吹いてくる風。南北両半球とも温帯上空では西寄りの風が卓越しているが、この風は偏西風とよばれている。温帯ではこの偏西風によって天気も西から東へと移動していく。すなわち、西の方角にある地域の天気は、その地域の天気を先取りしているわけで、「夕焼けは晴れの前兆」といった俚諺(りげん)も、西風による天気東漸の事実に基づいている。

根本順吉

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世界大百科事典(旧版)内の西風の言及

【人形浄瑠璃】より

…この人形の芸風の違いは,太夫の曲風とも関係する。竹本座の座頭2世義太夫(竹本政太夫,播磨少掾)は質実剛健な語り口(西風と呼ぶ。音階的には陰旋法)で男性を語るに適し,初世豊竹若太夫は花やかな語り口(東風,陽旋法)で女性の表現に適していた(近石泰秋《操浄瑠璃の研究》参照)。…

【義太夫節】より

…太夫はそれぞれ竹本,豊竹姓を名のるのみならず,それぞれに共通した様式のもとに結束を固めていた。こうした流派様式を,竹本座は西風(にしふう),豊竹座は東風(ひがしふう)とよんだ。西風は地味で写実的で劇的表現にすぐれ,東風ははなやかで旋律的表現にすぐれていた。…

【浄瑠璃】より

…98年(元禄11)筑後掾受領,1705年(宝永2)11月の《用明天王職人鑑》以後,竹田出雲(座本),近松門左衛門(作者),辰松八郎兵衛(人形),竹沢権右衛門(三味線)を擁し活躍した。その没後は竹本政太夫(《吉備津彦神社史料》《熊野年代記》に筑後掾悴義太夫の名があり,政太夫は2世義太夫とされてきたが3世か)が近松作品を深く語り分け,豊竹座の若太夫(豊竹若太夫,越前少掾)も紀海音の義理にからむ作風を巧みに観客の時代感覚に訴えて,西風(竹本),東風(豊竹)が競演し,浄瑠璃の近世意識が最高に発揮された。 享保(1716‐36)後半からの人形機巧の発達,舞台装置の発達は浄瑠璃の脚本化,舞台装置の歌舞伎化を招く。…

【風】より

…【堀 信夫】
[義太夫節]
 義太夫節の様式を示す〈風〉には,座の風と太夫個人の風とがある。座の風とは竹本座豊竹座の様式で,竹本座を西風,豊竹座を東風と称する。両者は基本的芸術理念,音階,旋律法,旋律型,三味線の音色や奏法などに相違がみられる。…

※「西風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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