ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルズミア」の意味・わかりやすい解説
エルズミア
Ellesmere
[没]1617.3.15. ロンドン
イギリスの法律家。本名トーマス・エガートン・ブラックレイ子爵 Viscount Thomas Egerton Brackley。コモン・ロー裁判所と対立するものとしての,大法官裁判所 Count of Chanceryを独立させ,衡平法上の救済の諸原則を発展させた。 1572年弁護士となり,女王エリザベス1世のもとで 1596年には国璽保管官 Keeper of the Great Sealとなった。エルズミアはジェームズ1世の主張する国王大権 (これはコモン・ロー裁判官 E.クックの主張と対立するものであった) を支持し,ジェームズ1世の支援を受けて貴族となり,前例を破って 21年間もの長期にわたって大法官の地位についていた。大法官裁判所は当初,コモン・ローでは救済を与えられない事件に裁決を下すために設けられたものであるが,コモン・ローの厳格性と不十分性とを矯正する役割をもち,コモン・ロー裁判所と敵対する存在となってきた。しかし,1616年,コモン・ロー裁判所の首席裁判官クックとエルズミアとが激突した際,国王の決定によってエルズミアが勝利を得たのち,大法官裁判所の衡平法管轄権はゆるぎないものとなった。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報