トレバー・ローパー(読み)とればーろーぱー(その他表記)Hugh Redwald Trevor-Roper

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トレバー・ローパー」の意味・わかりやすい解説

トレバー・ローパー
とればーろーぱー
Hugh Redwald Trevor-Roper
(1914―2003)

イギリスの歴史学者。ノーサンバーランド州グラントンの生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジに学び、同大学近代史欽定(きんてい)講座教授(1957~80)、ケンブリッジ大学ピーターハウス・カレッジ学長(1980~87)を歴任。16~17世紀ジェントリ興隆をめぐる論争、あるいは17世紀ヨーロッパの全般的危機をめぐる論争に、保守主義史観の代表的論客として活躍。またヒトラーの研究にも独自の地歩を築く。処女作『ロード大主教』Archbishop Laud(1940)を除いて、半世紀にわたる著作活動を通じて専門的大著を1巻も執筆しなかったことは、彼の才知に照らして惜しまれるべきかもしれないが、深い古典教養とヨーロッパ文化への広い関心とに根ざした珠玉の小論の数々ゆえに、彼は20世紀イギリス第一級の史家の名に値するのである。1979年一代貴族の男爵位Baron Dacre of Glantonを授かる。

[松浦高嶺]

『今井宏編・訳『十七世紀危機論争』(1975・創文社)』『橋本福夫訳『ヒトラー最後の日』(1975・筑摩書房)』『田中昌太郎訳『北京の隠者――エドマンド・バックハウスの生涯』(1983・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トレバー・ローパー」の意味・わかりやすい解説

トレバー=ローパー
Trevor-Roper, Hugh Redwald

[生]1914.1.15. ノーサンバーランドシャー
[没]2003.1.26. オックスフォードシャー
イギリスの歴史学者。オックスフォード大学卒業,1957年以後同大学欽定講座教授。イギリス,ヨーロッパの近代初期の歴史を考えるうえで宮廷対地方,国家対社会の対立という図式を提出。 R.トーニーや E.ホッブスボームらの進歩主義的歴史解釈に反対し,ジェントリー論争,17世紀の全般的危機論争の一方旗頭となる。主著『大主教ロード』 Archbishop Laud (1940) ,論文ジェントリー  1540~1640』 The Gentry 1540-1640 (1953) ,『17世紀の全般的危機』 The General Crisis of the 17th Century (1959) 。また『ヒトラー最後の日』 The Last Days of Hitler (1947) など専門以外の著書もある。

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百科事典マイペディア 「トレバー・ローパー」の意味・わかりやすい解説

トレバー=ローパー

現代英国の代表的な歴史家。処女作《ロード大主教》(1940年)以外にさしたる業績がなかったにもかかわらず,1957年オックスフォード大学近代史欽定講座教授に選ばれて話題をよんだ。希代の論争家として知られ,〈ジェントリー論争〉〈17世紀危機論争〉などにおいて,トーニーヒル,ホブズボームら進歩派を相手に論陣を張った。1979年デーカー・オブ・グラントン男爵となり,翌1980年オックスフォード大学を引退して,ケンブリッジ大学のピーター・ハウスの学寮長となった(−1987年)。1980年代には,彼自身かつて話題作《ヒトラー最後の日》(1947年)を著してその権威とみなされておりながら,ヒトラーの贋作日記を偽造と見破れず,これまた話題を提供した。

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改訂新版 世界大百科事典 「トレバー・ローパー」の意味・わかりやすい解説

トレバー・ローパー
Hugh Redwald Trevor-Roper
生没年:1914-2003

イギリスの歴史家。オックスフォード大学近代史欽定講座教授(1957-80)。1979年デーカー・オブ・グラントン男爵を授けられ,翌年オックスフォードを引退してケンブリッジのピーターハウスの学寮長となる。処女作《ロード大主教》(1940)以外の著書には評論集が多く,重厚な歴史研究には欠けるが,希代の論争家として知られ,ジェントリー論争,17世紀危機論争などで活躍した。邦訳された著書に《ヒトラー最後の日》(1947),《宗教改革と社会変動》(1967)などがある。
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世界大百科事典(旧版)内のトレバー・ローパーの言及

【ジェントルマン】より

…一つは,宗教改革からピューリタン革命に至る1世紀間には,おりからのインフレによって,伝統的な固定地代を徴収する貴族が没落したのに対し,競争地代を徴収し,毛織物その他のマニュファクチュア経営,石炭業などをも展開した資本家的なジェントリーが急速に勃興したというR.H.トーニーの主張である。これに対して,そのような事実は存在せず,貴族であれ,ジェントリーであれ,宮廷内に官職を確保しえた一族つまり〈宮廷派〉は勃興し,それができなかった一族〈カントリー派〉は没落を余儀なくされたとするH.R.トレバー・ローパーの学説が対立,〈ジェントリー論争〉の名を与えられている。論争の行方は,結局ピューリタン革命を資本家的ジェントリーによる〈ブルジョア革命〉と解するか,〈宮廷派〉に対する議会=〈カントリー派〉のクーデタと解するかという問題にもつながっている。…

※「トレバー・ローパー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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