エロはエロティック、グロはグロテスクの略で、1930~31年(昭和5~6)を頂点とする退廃的風俗をいう。この時期社会不安が深刻化して多くの人々は刹那(せつな)的享楽に走った。「ねえねえ愛して頂戴(ちょうだい)ね」という流行歌がヒットし、エロ物・怪奇物の出版が相次ぎ、盛り場ではエロサービスを売り物にしたカフェーやバーが軒を並べた。レビュー小屋では踊り子が脚を振り上げ、扇情的にズロースを落としてみせた。警視庁が、股下(またした)2寸(約6センチメートル)未満あるいは肉色のズロース着用や、腰を前後左右に振る動作の禁止を通達する一幕もあった。昨今のポルノ風俗に比べればその露出度はたわいもないが、ひどい不況、金融恐慌、倒産の続出、失業の増加、凶作による農村の一家心中や娘の身売り、左翼思想家、運動家の徹底的検挙など出口のない暗い絶望と虚無感が背景にあり、当局の取締りは、国民の左翼化よりはましということで手加減された。31年の満州事変以後の軍国主義台頭でこの逃避的流行は消された。
[森脇逸男]
…民衆は前途に生きる望みを失い,刹那的・享楽的な生活を追い求めた。不安,憂うつ,懐疑,モダン,エロ・グロ・ナンセンスなどの言葉が流行した。モガやモボ,〈やじゃありませんか〉も,この時代を風靡した言葉である。…
※「エログロナンセンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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