ル・プレー(読み)るぷれー(その他表記)Pierre Guillaume Frédéric Le Play

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ル・プレー」の意味・わかりやすい解説

ル・プレー
るぷれー
Pierre Guillaume Frédéric Le Play
(1806―1882)

フランスの社会学者、社会改良運動家。エコール・ポリテクニク(理工科大学校)卒業。鉱山技師だった若いころのヨーロッパ各地での見聞とカトリック信者としての情熱から社会改良を志し、そのための理論構築と実践活動に従事するが、その基礎として社会的現実の実態を科学的に把握することが不可欠であるとして労働者家族に関する実態調査を実施し、膨大な著書『ヨーロッパの労働者』Les ouvriers européens全6巻(1855)を公刊した。この研究をもって彼は社会調査の祖の一人とされ、多くの後継者を生んで、ル・プレー学派を形成した。彼の改革思想は自由主義とも社会主義とも異なり、家父長的家族制度と温情主義的親方制度による伝統的秩序の復活を志向する保守主義的なものであった。彼の研究と実践活動の影響は単にフランス内部にとどまらず広く欧米に及び、イギリスではル・プレー・ハウスLe Play Houseが設立された。

[石川晃弘]

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改訂新版 世界大百科事典 「ル・プレー」の意味・わかりやすい解説

ル・プレー
Pierre Guillaume Frédéric Le Play
生没年:1806-82

フランスの社会学者,社会改良運動の実践者。鉱山技師としてヨーロッパの民情に親しく接し,実情と遠い社会改革思想を批判して社会調査から出発することを要求し,みずから勤労者の家族について膨大な踏査を行い,数十年をかけて《ヨーロッパの労働者Les ouvriers européens》(1855)を完成させた。研究の方法として家計分析を中心とする数量的な方法と,対象の精緻な記録からなる記述的な方法を用い,ヨーロッパの資本主義化に伴う国民の社会関係の変容(コミュニティの喪失)は,物質的な窮乏のみに着目する社会主義者による政治的な革命によっては救済されず,〈道徳的な経済économie sociale〉の復権によって対処するべきだとし,職場での上司からの温情主義と,家庭での父親-母親の分業を基とする伝統的秩序の回復を説いた。研究法はル・プレー学派によって継承され,1881年には〈道徳経済協会〉から機関誌《社会改良》が刊行され,その思想は広くヨーロッパ中に伝播(でんぱ)し,イギリスに〈ル・プレー・ハウス〉を生んだ。今日でも実証的・実務的な社会研究者の手本とすべき議論が多く残されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ル・プレー」の意味・わかりやすい解説

ル・プレー
Le Play, (Pierre Guillaume ) Frédéric

[生]1806.4.11. カルバドス
[没]1882.4.5. パリ
フランスの社会学者,採鉱技師。 1840年エコール・ド・ミンヌ (鉱山学校) の主任技師および冶金学教授,48年同校の監査役。技師としての仕事のかたわら 55年頃まで社会調査活動にたずさわった。しかしフランス二月革命を契機に技師を断念,社会学に専心することを決意。さらに普仏戦争にフランスが敗れたため,67年からつとめた上院議員を辞任,政界からも退いた。彼は社会改良の理論と実践の基礎として現実の状態を科学的に把握するため,労働者の家族の実態調査を行い,社会調査の祖の一人に数えられている。彼の開発した地域調査方法は,多くの後継者を生み出し,ル・プレー学派と呼ばれるにいたった。主著『ヨーロッパの労働者』 Les Ouvriers européens (1855) ,『フランスにおける社会改良』 La Réforme sociale en France (2巻,64) 。

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世界大百科事典(旧版)内のル・プレーの言及

【官僚制】より

…このころ啓蒙哲学者ド・グリムが書き残したもののなかで,それが君主制,貴族制などと並ぶ政体の一類型として扱われているのはその例証である。19世紀の中葉に至り,このことばにより明確な定義を与えようとして,ル・プレーは,細目に心を奪われ,必要以上に仕事を複雑にし,世の中の自発的な動きを抑えることに腐心している役人のあいだに権限をまき散らすことをいう,と書いた。すなわち,官僚制の意味内容が手段の自己目的化の結果として起こるさまざまの病理現象へと微妙に変化してきたのである。…

※「ル・プレー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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