改訂新版 世界大百科事典 「エンジン油」の意味・わかりやすい解説
エンジン油 (エンジンゆ)
engine oil
クランクケース油crankcase oilともいう。内燃機関の各部を潤滑するために使われる潤滑油。原油を蒸留して得られる常圧残油をさらに減圧蒸留して適切な粘度範囲の留分を得たのち,水素化精製などの方法で処理し,それに清浄分散剤,酸化防止剤などを添加して製造される。粘度や用途,性能により多くの分類がある。SAE(アメリカ自動車技術者協会)は粘度により分類し,SAE5W,10W,20W,20,30,40,50などの等級を定めている。この順番に粘度が高い。API(アメリカ石油協会)は用途によってガソリンエンジン油とディーゼルエンジン油に分類し,またそれぞれを性能によって細分している。JIS(日本工業規格)では,陸用を1種(軽荷重用),2種(中荷重用),3種(重荷重用)に,また舶用を1種,2種(いずれもシステム油),3種(システムシリンダー油),および4種(シリンダー油)に区分している。システム油system oilは外部油ともいわれ,エンジン各部の潤滑および冷却を目的とする。シリンダー油sylinder oilは内部油ともいわれ,シリンダー内のピストンの潤滑に用いられる。以上の内燃機関用潤滑油は,数多い潤滑油のなかでも最も過酷な条件下で使用されるので,とくに優秀な性能(適切な粘度,高い粘度指数--温度により粘度の変化の少ないこと,酸化安定性,清浄・分散性など)が要求される。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報